企業の8割で男女間に賃金格差
―賃金格差の公表義務

カテゴリー:労働法・働くルール

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  • 国別労働トピック:2018年8月

男女間賃金格差に関する情報公開を義務付ける制度に基づき、4月までに全国で1万組織あまりがデータを公表した。全体の8割近くの組織が男女間の賃金格差を報告しており、全体平均で12%、建設業や金融保険業、教育業などでは2割以上の格差が確認された。

公表制度スタートから1年

賃金格差の公表制度(gender pay gap reporting)は、男女間賃金格差の縮小に向けた施策として、2017年4月(公共部門は同年3月末)に導入された。従業員の規模が250人を超える雇用主(注1)に対して、毎年、男女間の時間当たり賃金と一時金(bonus)に関する格差(平均及び中央値による比較)のほか、一時金支給の対象となる男女別の従業員比率、また賃金水準の四分位別男女比率(注2)の公表を義務付けるもの(注3)。雇用主は、一般からアクセス可能なウェブサイトに結果を掲載するとともに、政府の設置する専用ウェブサイトへの登録を行なうこととされている。対象となる「従業員」の範囲には、雇用契約のある従業員のほか、労働者、派遣労働者、一部の自営業者(自身で役務を提供しなければならない者)が含まれる。賃金格差は、賃金の単純な平均及び中央値の比較であり、職務等を考慮していないため、そのまま違法な賃金差別の存在を示すものではないが、組織内に大きな賃金格差がある場合、何らかの問題が存在する可能性があり、各データの計算がその特定に役立ちうるとされる(注4)

全体の約8割で男女格差

対象となる組織は、制度導入から1年以内に初回の公表を行うこととされ、民間組織については4月はじめ、公的機関については2018年3月末が期限となっていた。期限内に公表を行った1万104組織について、政府サイトのデータをもとに庶民院図書館がまとめた資料(注5)によれば、全体の78%の組織で、女性の賃金水準(中央値による比較、以下同)が男性より低く、女性の賃金水準が男性を上回る組織は14%に留まっている。男女間の賃金格差は平均で12%(注6)。ただし3割近い組織(27%)が、20%以上の賃金格差を報告している。また、規模の大きい組織では相対的に賃金格差が小さい傾向にあるとされる(注7)

同資料は、より詳細な分析を行っていないが、現地メディアが政府サイトの情報をもとに別途分析したところによれば(注8)、賃金格差の状況は業種による差が大きい。例えば、建設業(25%)、金融保険業(22%)、教育業(20%)などで大きな賃金格差がみられる一方、宿泊・食品サービス業(1%)や保健・福祉業などでは、格差はごくわずかに留まる。

違反組織には罰金の適用も

なお、制度の実施状況は、平等人権委員会が監視の役割を担っている。同委員会には、期限までに公表を行わなかった組織(注9)に対して調査(investigation)を行い、裁判所に申し立てて是正命令の発行を求める権限が与えられている。是正命令にも従わない場合、訴追されて有罪となれば、罰金が適用される。また、調査の対象となった雇用主は、委員会のウェブサイト上で公表される予定だ。

参考資料

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