シェアリング・エコノミー従事者、280万人
―政府報告書

カテゴリー:労働法・働くルール多様な働き方

イギリスの記事一覧

  • 国別労働トピック:2018年4月

シェアリング・エコノミー従事者に関する政府の調査報告書によれば、国内の従事者はおよそ280万人で、荷物の配送やクラウドワーク(プラットオフォームを通じた仕事の請負)、車での旅客輸送などの従事者の比率が高い。相対的に若い層が多く、また大半は副業として従事しているとみられる。報酬の低さや、雇用法上の権利の弱さにもかかわらず、半数以上が、こうした仕事における自律性や柔軟性に満足していると回答している。

4分の1が最賃未満、過半数が仕事に満足

政府は2月、シェアリング・エコノミーや待機労働契約、派遣労働などの不安定な働き方の保護に関する専門家レビュー(注1)の提言を受けて、今後の対応に関する方針文書(注2)を示したところだ。これと併せて公表されたシェアリング・エコノミー従事者に関する報告書(注3)は、国内における従事者の規模や実態に関する調査結果をまとめている。

報告書は、過去12カ月にシェアリング・エコノミー(注4)に従事にした者について、18歳以上人口の4.4%、およそ280万人と推計している(注5)。相対的に若い層(18~34歳層)が過半数(56%)を占め(注6)、また全体の53%は、初めてこうした仕事に従事してから1年以内(うち38%は6カ月以内)と比較的日が浅い(注7)。従事したことのある業務のうち多くを占めるのは、荷物の配送(過去12カ月間で42%が従事)で、これにクラウドワーク(同37%)、車による旅客輸送(28%)、料理の配達(21%)などが続く。

シェアリング・エコノミーからの収入が主な収入となっている従事者の比率は小さく(収入の9割を占めるとの回答は9%)、収入全体の5%未満との回答が65%にのぼる(注8)。このため、大半は副業としてシェアリング・エコノミーに従事しているとみられる。過去12カ月の収入額の中央値は375ポンドと低いが、一部の従事者は相対的に高い収入を得ているとみられる(14%が1万ポンド以上と回答)(注9)。従事者の25%は、時間当たりの収入額が最低賃金(2018年3月時点で時間当たり7.50ポンド)を下回る状況にあり、特にクラウドワーク従事者(45%)でこの傾向が顕著だ。

図表:業務別の時間当たり収入額
図表:画像

出所:"The Characteristics of those in the Gig Economy"

全体では53%が、こうした仕事に満足していると回答、自律性(58%)や柔軟性(56%)を理由として挙げる回答が多い。一方、収入額や、仕事を通じた手当に不満を感じているとする層もそれぞれ25%にのぼり、また23%は、キャリアの発展性や訓練機会の不足について不満であるとしている。

なお、今後12カ月について、こうした仕事を継続するか否かとの問いには、41%が続けるとする一方、39%は続けないと回答している。

不安定でも柔軟性を評価

併せて公表された個人調査の結果に関する報告書(注10)によれば、主な収入源としてシェアリング・エコノミーに従事している労働者の間では、労働時間や収入の不安定さ、仕事が直前にならないとわからない状況や、雇用法上の権利の不足からくる影響を受けやすいことを明らかにしている。収入を得る必要から、こうした従事者は仕事を受けるか否かを選ぶことができていない可能性がある、と報告書は指摘している。

ただし、多くの従事者は、シェアリング・エコノミーの高い柔軟性を評価しており、結果として仕事の保障の低さや雇用法上の権利の弱さと引き換えになることは公正だと感じていると回答している。これには、多くが一時的にのみこうした仕事に従事していることが影響しているとみられる。また一部の者は、明確なプランはなくとも、先々には他の仕事などに移行することを想定しているという。

参考資料

参考レート

2018年4月 イギリスの記事一覧

関連情報