(2018年1月1日~)母性保護法、職業訓練関連の政令等、いくつかの制度変更について

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2018年1月1日から、母性保護に関する新規定や、職業訓練等の委託に関する最低報酬額が導入されたほか、求職者基礎保障の標準給付や児童手当の額が引き上げられ、法定年金保険料率が改定された。以下に概要を紹介する。

母性保護の新規定

改正母性保護法(MuSchG)が2018年1月1日から施行された。一部は、2017年5月の公布直後から施行されており、①障がい児を出産した場合、従来の8週間から12週間に産後休暇が延長となり、②妊娠中と産後4カ月の解雇規制が、妊娠12週以降の流死産の場合にも同じく適用されるようになった。2018年の改正により、従来の労働者(家内労働者も含む)に加えて、学生、職業訓練生、ボランティア等も保護対象となった。また、これまで個別に規定されていた公務員、裁判官、軍人も全て統一され、同じ保護水準が適用される。

このほか2018年末までに妊娠中や授乳の母親が安全に働ける環境であるかの確認が使用者に義務付けられた。
同改正法は、妊娠中、出産直後または授乳中の労働者の安全衛生改善に関するEU指令(Directive 92/85/EEC)の国内法化にも対応している。

職業訓練および継続訓練業務に対する委託関連最低報酬に関する政令

社会法典第2編と社会法典第3編に定める職業訓練および継続訓練業務に対する委託関連最低報酬が連邦レベルで初めて導入された。1時間当たり15.26ユーロである。これにより、職業安定所とジョブセンターの委託を受けて職業訓練や継続訓練を実施する全てのサービス事業者は、この最低報酬額の適用を受ける。

求職者基礎保障給付の引き上げ

求職者基礎保障の新しい標準給付額が適用された。失業手当Ⅱ(ArbeitslosengeldⅡ)、および社会手当(Sozialgeld)に関する単身受給者の標準給付月額は、409から416ユーロに引き上げられた(詳細は図表1の通り)。

図表1.求職者基礎保障の標準給付月額 (単位:ユーロ)
受給資格者 2017年 2018年
単身者(成人1人あたりの標準月額)、単身養育者(ひとり親)の受給資格者 409 416
家計を一にして同居するパートナー(満18歳以上)それぞれに対して 368 374
その他の就労可能な満18歳以上の受給資格者/ジョブセンターの保証なしに転居する満18歳以上25歳未満の受給資格者 327 332
14歳超 18歳未満の若者 311 316
6歳超14歳以下の子供 291 296
0歳から 6歳以下の子供 237 240
  • 出所:BMAS(2017).

「求職者基礎保障」とは、主に長期失業者とそのパートナー等の生活保障を目的とした制度である。同制度では、求職者本人に「失業手当Ⅱ」を、同一世帯の就労能力のない家族に「社会手当」を給付する。なお、病気や事故等で稼得能力のない困窮者の生活保障を目的とした「社会扶助(Sozialhilfe)」の給付水準も、求職者基礎保障の標準給付額と同額で設定されており、1月1日から同様に引き上げられた。

児童手当等引き上げ

子育て世帯の経済的負担軽減を図るため、児童手当、児童加算、基礎控除(児童控除)の額が各々引き上げられた(図表2)。同制度は、18歳未満(教育期間中の子は25歳未満、失業中の子は21歳未満、25歳到達前に障がいを負い、就労困難になった子は無期限)の子を扶養する者が対象となっている。

図表2.児童手当等の引き上げ (単位:ユーロ)
受給資格者 2017年 2018年
児童手当(Kindergeld) 1-2人目(月額) 192 194
3人目(月額) 198 200
4人目以降(月額) 223 225
児童控除(Kinderfreibetrag)(年額) 7,356 7,428
児童加算(Kinderzuschlag)上限額(児童1人につき) 170 170
  • 出所:Bundesregierung (2017).

法定年金保険料率の改定

法定年金の保険料率は2018年1月1日から18.6%に引き下げられた(鉱山従業員年金保険は24.7%)。

なお、2012年から続く年金受給開始年齢の段階的引き上げは、さらに1カ月引き上げられる。1953年生まれで2018年に65歳を迎える者は65歳7カ月で年金を満額受給することができる。

参考資料

  • BMAS(Pressemitteilungen, 14. Dezember 2017), Bundesregierung (Artikel Dezember 2017) ほか。

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