失業保険加入者に職業技能向上補助金を支給

カテゴリー:雇用・失業問題人材育成・職業能力開発

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  • 国別労働トピック:2017年11月

人力資源・社会保障部と財政部は2017年5月に「失業保険による失業保険加入者の職業技能向上支援に関する問題についての通知」(以下「通知」)を公布した。失業保険に加入し、かつ職業資格を取得している労働者に対して、職業能力の向上を支援するため、失業保険基金から補助金を支給する。労働者の能力向上をはかることは、失業の予防につながる。また、在職者が失業保険加入のメリットを目に見える形で得ることになり、その保険料納付義務の履行を促進する効果も期待されている。人力資源・社会保障部によると、支給対象者は毎年約200万人にのぼる見通し。

人手不足の職種には最大2500元を支給

「通知」によると、補助金を受け取る条件は、(1)失業保険に加入し、その納付期間が累計で36カ月以上ある、(2)2017年1月以降に「職業資格証書」の初級(5級)、中級(4級)、高級(3級)、あるいは「職業技能等級証書」を取得した、という2点である。

職業資格証書とは、それぞれの職業について労働者が就業するために必要な専門知識や技能などを証明するものである。職業資格には、職に就くために取得しなければならない「許可類」と、職業能力の程度を示す「水準評価類」の2つのタイプがある。

人力資源・社会保障部が2016年12月に公布した「国家職業資格目録リスト」によると、151の職業資格が設定されており、このうち42職業が「許可類」、109職業が「水準評価類」となっている。

資格は1~5級の5つの等級に格付けされる。高級技師(1級)、技師(2級)を除く3つのレベルの資格取得者が補助金の支給対象になる。

なお、職業技能等級証書は主に技能職に対して発行される資格証書である。

補助金支給の手続きは次のとおりである。前述の条件を満たした労働者は職業資格証書または職業技能等級証書の発行日から12カ月以内に、失業保険加入地の失業保険機構で補助金を申請する。失業保険機構は職業資格証書または職業技能等級証書をオンラインで確認し、失業保険加入者の本人情報と照合して審査を行う。審査を通過すれば、申請者の個人口座や社会保険カードに補助金が振り込まれる。

支給額は初級(5級)で1000元、中級(4級)で1500元、高級(3級)で2000元以下の額とする。同一職業の同一等級の資格につき1回のみ支給する。

また、非常に人手不足の職業については、各地域が実情に応じてリストを作成し、その職業資格を持つ者に対して前述の額より高い水準で支給する。リストは毎年更新する。これにより、最高で2500元を支給する地域もある。例えば重慶市では、自動車整備士、家政婦などを非常に人手不足の職業としてリストアップしている(表1)。

表1:補助金支給額
  支給額
通知 初級(5級)1000元以下。
中級(4級)1500元以下。
高級(3級)2000元以下。
  (非常に人手不足の職業の資格取得者への支給額)
重慶市 初級(5級)1200元以下。
中級(4級)1800元以下。
高級(3級)2500元以下。
陜西省 初級(5級)1200元以下。
中級(4級)1700元以下。
高級(3級)2200元以下。
浙江省 地域ごとに調整し、「通知」の基準を踏まえて、50%以下の範囲で引き上げる。
  • 出所:各地の人力資源・社会保障部

失業保険の財源活用

政府はこれまでにも雇用の安定のため、失業保険の財源を活用する政策を打ち出している。

人力資源・社会保障部などは2014年11月に「失業保険による企業の雇用安定支援に関する通知」を出し、失業保険に加入して、その費用を納付し、前年度に人員削減しないか人員削減率がその地域の都市部登録失業率より低い企業に対して、「合併・再編」「過剰な生産能力の解消」「立ち遅れた生産能力の淘汰」を行なう期間中(2020年まで)、雇用を安定させるために失業保険基金から補助金を支給することとした。具体的には、従業員の生活費、社会保険料、転職・技能向上の訓練費用などの支払いに充てられる。

さらに、2015年4月には国務院(政府)が「新しい情勢下の就業・創業のさらなる改善に関する意見」を出し、支援の対象を拡大する方向性を示した。具体的な運用が地方が定める。

人力資源・社会保障部によると、2016年の失業保険基金の支出は961億元で、そのうち、「失業防止・就職促進」への支出が545.6億元と56.8%を占めている。

一方、政府は企業や従業員の負担軽減のため、保険料を削減する措置を講じてきた。2015年3月に失業保険の料率(企業負担と個人負担の合計)の基準を3%から2%に、2016年4月には1~1.5%に引き下げ、個人負担分は0.5%を超えないこととした。さらに、2017年1月には2018年4月までの措置として、社会保険料の料率(企業負担と個人負担の合計)が1.5%である地域は1.0%(個人負担分は0.5%を超えない)に引き下げることができるとする通知を出している。

料率を引き下げる中で安定した財政を維持するためには、企業・従業員による確実な保険料納付義務の履行が欠かせない。職業技能向上補助金は在職者も失業保険加入の利益を享受できるものであり、保険料納付に対する理解を広める効果も期待されている。

参考資料

  • 人力資源・社会保障部

参考レート

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