外国人就労者を三区分で管理

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2017年8月

国家外国専門家局は2016年9月に「外国人就労許可制度」の見直しに関する通知を発表した。これは、二つに分かれていた制度を一本化したうえで、外国人労働者をA類(ハイレベル)、B類(専門)、C類(一般)に三区分し、それぞれ必要とされる条件を満たす者に就労の許可を与えるというものである。非常に高い能力をもつ人材の入国を奨励する一方で、国内の雇用を確保するため、一般的な労働者の就労を管理、抑制する狙いがある。北京市、上海市、広東省などの地域(注1)で試行され、2017年4月1日から全国での施行が始まった。

「外国人就労許可証」に統合

従来の外国人就労許可制度は、一般向けの「外国人入国就労許可」と専門家向けの「外国専門家就労許可」の二種類に分かれていた。それを「外国人就労許可」制度に統合して国家外国専門家局が管理する。これにより、「ビザ発行許可通知書(被授権単位査証通知表)」を取得する際などに必要だった「外国人就労許可証書」または「外国専門家就労許可証書」が「外国人就労許可通知」に統合され、外国人労働者が入国後に取得する「外国人就労証」または「外国専門家証」は「外国人就労許可証」に一本化された(注2)。外国人が中国で就労するために必要な手続きは図1の通りである。このプロセス自体に変更はない。

変更点には、「外国人就労許可通知」がオンラインでプリントアウトできるようになることも含む。また、「外国人就労許可証」には、一人ひとりに生涯変わらない一つの番号が付与される。取得申請に必要な書式も全国で統一され、オンライン申請を可能にした。

図1:中国における外国人就労手続きの流れ
図表:画像

「ハイレベル」は奨励、「専門」は制限、「一般」は抑制

専門性に基づくランク付けも行われる。A類(ハイレベル人材)、B類(専門人材)、C類(一般人材)の3種類である。A類は受け入れに制限を設けないのに対し、B類は「市場の需要」に基づいて制限し、原則として60歳を超える者は就労の申請ができない(注3)。C類は「国家の規定」によって人数を抑制する。

A類に該当するのは、「国内の人材誘致計画で選ばれた者」「国際的に公認された実績の基準に合致する者(国際的な賞の受賞者など)」「市場の動向によって奨励される職業の職位で必要とされる者(グローバル企業の上級管理職など)」「イノベーション(革新)、創業を行う人材」「35歳以下の優秀な青年(世界上位200大学で博士号を取得した者など)」というように非常に高度な能力を持つ人材である。

B類は、「学士以上の学位を持ち、関連業務で2年以上の実務経験があり、一定の条件を満たす者」「中国国内の大学で修士以上の学位を取得した者」「世界上位100大学で学位を取得した者」「外国語の教員」などと定義している。

C類は、「行政機関の許可等により雇われる者、政府間協議に基づき雇われる者」「政府間協議に基づく実習生・見習」「ハイレベル人材の家政サービスに従事する者」「季節労働者」などとしている。臨時的、季節的で、特別な技術を持たない、あるいはサービス的な業務に従事する者などが当てはまる。

許可制度の統合に際し、就労者の年収や学歴、関連業務の経験年数、勤務月数、中国語のレベル、勤務地、年齢などを点数化するポイント制を導入する。ポイントが85点以上の者はA類、60点以上(85点未満)の者はB類に位置づける。これにより、A類の許可証取得の手続きはこれまでより簡素化、迅速化する見込み。

なお、新制度は、地方政府が実情に応じて運営する。許可の詳細な条件等は地方によって異なると予想される。B類の年齢制限をはじめ、どの程度厳密に運用されるのか、不透明な部分も少なくない。

リクルートホールディングズの調べによると、在中国日系企業の日本人を対象とした求人件数は、3月、4月と2カ月連続で前年同月比30%以上の減少を記録した。同社では「外国人就労許可制度が4月に変更され、日本人の採用に慎重になっている日系企業が依然として多い。新制度の内容や運用方針が明確化するまで、この状況が続きそうだ」との見方を示している。

参考資料

  • 国家外国専門家局ウェブサイト、人民網、リクルートホールディングズ・ウェブサイト

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