若年者に対する訓練方式とその成果
 ―「仕事・学習並行制度」に関するKRIVET調査結果より

カテゴリー:若年者雇用人材育成・職業能力開発

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  • 国別労働トピック:2017年5月

若年者の雇用が大きな課題となっている韓国では、その解決策の一環として、2013年より「仕事・学習並行制」を導入している。これは企業が若年者を訓練生として採用し、理論と実務教育を並行して提供することにより、若年者に学歴とともに職務能力を取得させた後、当該企業または同業種の企業に正式に採用するというもので、欧州諸国に見られる職場に基礎を置く学習の韓国版と言える。一定の条件を満たす企業には「仕事・学習並行制」への参加資格が与えられ、また参加企業には政府より各種支援が提供される。

韓国職業能力開発院(KRIVET)は「仕事・学習並行制」における現場訓練の成果に関し、講義中心の訓練よりもOJTを通じた実務中心の訓練がより効果的であることを、アンケート調査及びその分析結果から明らかにした。以下はKRIVETの報告概要である。

講義中心の訓練と実務中心の訓練に大別

KRIVETは「仕事・学習並行制」に参加する企業において実施されている訓練には、大きく2つに分類できると言う。ひとつは、講義中心の現場訓練であり、これは企業の現場講師が訓練生に主として講義を通じて知識・スキルを提供する方式である。もうひとつは、実務中心の現場訓練であり、これは企業の現場講師が訓練生とともに業務を遂行しながら知識・スキルを提供する方式である。

KRIVETは、講義中心の訓練を経験した労働者185人と、実務中心の訓練を経験した196人の合計381人を対象に、2016年にアンケート調査を実施した。調査対象者の業種別内訳は、機械45.4%、情報通信30.6%、電気電子24.0%である。今回の調査とその分析結果から、「仕事・学習並行制」における現場訓練の運営方式によって、訓練の成果に違いが出ることが示された。

効果の高いOJT

「訓練を通じて学習したことを実際の業務に使用しようと努力したか」とういう設問に対しては、実務中心の訓練を経験した回答者の71.9%が肯定的な回答をしたのに対し、講義中心の訓練を経験した回答者の肯定的な回答は56.8%であった。また、「訓練を通じて業務の問題解決能力が向上したか」という設問に対しても、実務中心の訓練を経験した回答者の68.9%が肯定的な回答をしたのに対し、講義中心の訓練を経験した回答者の肯定的な回答は55.1%に留まった。この結果からKRIVETは、「業務適応度及び職務遂行能力の向上」については、実務中心の訓練がより効果的であるとしている。

また、同様の傾向は組織・職場への適応や満足度といった面でも見られる。例えば「職場生活全般に対する満足度」についての設問に対しても、実務中心の訓練を経験した回答者の64.3%が肯定的な回答をしたのに対し、講義中心の訓練を経験した回答者の肯定的回答は55.1%であった。「会社への愛着心」についても、実務中心の訓練を受けた回答者の61.2%が肯定的な回答をしたのに対し、講義中心の訓練を受けた回答者のそれは49.2%であった。更に、「訓練が会社の生産性の向上に寄与したと考えているか」いう設問に対しても、実務中心の訓練を受けた回答者の46.4%が肯定的に回答したのに対し、講義中心の訓練を受けた者の回答者のうち肯定的な回答をした割合は33.0%であった。

以上の結果から、KRIVETは「職務遂行能力向上」「組織・職場適応、満足度」「生産性の向上」のいずれの観点においても、講義中心の訓練よりも実務中心の訓練がより効果的であるとしている。

「構造化されたOJT」の必要性

実務中心の訓練からは講義中心の訓練からよりも高い成果を得られることについて、KRIVETは、供給側からの一方的な講義を行うよりも、実際に講師と訓練生がともに業務を遂行しながら、訓練生が関連知識とスキルを習得し、また講師から即座にフィードバックを受けられることが職務遂行能力の向上により効果的であるばかりでなく、組織・職場適応、満足度といった目に見えない成果にも効果がある点も指摘した。

今回の調査とその分析によって、OJTの効果が改めて検証された結果となったが、KRIVETは最後に、現場において実務訓練を提供する講師の能力によっては、その効果にばらつきが生じてしまうという短所を補完していくため、現場訓練プログラムの設計から実行そして評価までが構造化されてなされる「構造化されたOJT(Structured OJT)」を定着させていく必要を提言している。

参考資料

  • 「KRIVET Issue Brief」 2017年118号 韓国職業能力開発院

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