産業別職業資格(CQP)の問題と改善の必要性
―CESEによる報告書

カテゴリー:人材育成・職業能力開発

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  • 国別労働トピック:2017年2月

経済・社会・環境評議会(Conseil économique, social et environnemental)は、2016年9月に産業別の職業能力証明書(CQP:Certificat de qualification professionnelle)に関する勧告をとりまとめた報告書を公表した。同報告書は、CQPの認知度が低いために十分に利用されていない点や、企業や労働者のニーズに必ずしも合致していない点、類似した資格が乱立している等の問題を指摘している。

国家資格と産別委員会による資格

フランスにおける職業能力に関する証明書には様々なものがある。例えば、職業適性能力証明書(CAP:Certificat d'aptitude professionnelle)、職業能力証明書(BP:Brevet professionnel)、職業バカロレアや技術バカロレア(Baccalauréats professionnels ou technologiques)(職業・工業高校の課程修了者が取得することが多い)、学士号や修士号(licences et masters)(注1)などは、いずれも教育・高等研究省が管轄している国家認定資格(修了証明書)である(注2)。一方、職能証明書の一つである職業能力証明書(CQP)は、様々な分野の職業能力を証明するために産業単位で認定する。国が認定する資格(証明書)ではなく、その職能=職業能力を認定する産業のみで有効とされる。この証明書の詳細(規定)は、産業別の雇用に関する労使同数全国委員会によって決定される(注3)

CQPの認知度不足

政府のシンクタンク的な役割を果たしている経済・社会・環境評議会は、2016年9月にCQPに関する報告書を公表した(注4)。同評議会は憲法69条に規定された機関であり、政策決定に関する政府への諮問機関である。報告書はCQPが十分に利用されていないことを指摘しており、その理由の一つとして「労働者にほとんど知られていなく、使用者にも正確に知られていない」 ことを挙げている(注5)

職能証明全国委員会(CNCP:Commission nationale de la certification professionnelle)(注6)は、CQPに関する評価を行っておらず、詳細な統計情報も存在しないため、認定される資格の総数すらはっきりしていない。報告書によると、CNCPは、2016年1月時点で、895のCQPの存在を把握しており、そのうち363は職能証明全国総覧(RNCP)に登録されている。なお、生涯教育訓練に関する情報センター(Centre Inffo)(注7)は、1072とするなど、全体像がつかめていない(注8)

体系化不足とレベルの不明確さが問題点

この報告書では、CQPが特定の産業内でのみ承認されていることを弱点とする。職能証明書の重複や陳腐化している場合があるからだ。産業内の様々な要求に応えた結果、類似したもの、需要が少ないもの、将来性が見られない時代遅れのものがある。企業や労働者への周知がなされず、ほとんど利用されていないCQPもある。教育・高等研究省が管轄している職能証明は、その内容に応じて、Niveau V(最低レベル)からNiveau I(最高レベル)に分類されているが、CQPは職能証明全国総覧(RNCP)にレベルが明示されていないため(注9)、客観的な技能レベルの判断基準となりにくい(注10)

必要性の高い資格の把握と情報提供の強化を提案

こうした不備を補うものとして、報告書は次の7つの改革を勧告している(注11)

  1. 企業や労働者、就職・転職支援関係者へのCQPの利用を促したり、職能向上に関するインターネットサイト(注12)への情報提供を強化することによって周知させること(注13)
  2. 様々な職能証明書との関連付けをそれぞれの特徴を尊重しながら強化すること。
  3. 産業ごとにCQPが就職に有利に作用するかどうかを調査すること。
  4. CQPが技術革新などによる職種の内容の変化を先取りするという点で有用かどうか、フランス戦略庁(France-Stratégie)が分析すべきであること。
  5. 職種の変化に合わせた職能証明の問題を取り扱うために、全国産業評議会(CNI:Conseil national de l'industrie)(注14)と雇用及び職業訓練に関する全国産業間労使同数委員会(COPANEF:Comité paritaire interprofessionnel national pour l'emploi et la formation)が連携する枠組みを形成すること。
  6. 新たにCQPの設置する場合、労使同数で決定する原則を今後も維持していくとともに、産業界の自由度を確保すべきであること。
  7. 新たなCQPの設置にあたり、職能を証明する必要性や既存制度との整合性などを確認した報告書を作成すること。

(調査部海外情報担当)

(ウェブサイト最終閲覧日:2017年2月28日)

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