世界の若年失業率、数年ぶりに悪化
―ILO報告

カテゴリ−:雇用・失業問題若年者雇用

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  • 国別労働トピック:2016年9月

国際労働機関(ILO)は8月24日、世界の若年雇用の情勢をまとめた『世界の雇用及び社会の見通し-若者動向編』を発表した。それによると、ここ数年緩やかに改善していた若者の失業率は再び悪化に転じ、2015年の12.9%から2016年には13.1%に悪化する見通しである。

失業率、2017年も高止まりか

ILOによると、2016年の世界経済成長率は、2015年後半の予測を0.4ポイント下回る3.2%にとどまる。アルゼンチン、ブラジル、ロシアなどの一部の主要な新興国の景気後退が深刻だったためだ。その結果、ここ数年改善しつつあった若年失業率は再び悪化する見込みで、2016年、2017年ともに改善の目処は立っていない(図表1、2)。

図表1:世界の若年失業率の推移2000年~2017年(単位:%)
図表1:画像

出所:ILO(2016)(注)2016年、2017年はILO予測値

図表2:世界の若年失業者数の推移2000年~2017年(単位:百万人)
図表2:画像

出所:ILO(2016)(注)2016年、2017年はILO予測値

新興経済諸国で特に悪化

失業率の悪化が特に著しいのは新興経済諸国で、2015年の13.3%から2017年には13.7%に悪化すると予測されている。他方、発展途上国の若年失業率は9.5%前後で比較的安定して推移すると見られるが、若年失業者の絶対数で見ると、労働人口の増加により2016年は前年比で約20万人増加し、2017年までに790万人に達することが見込まれる。先進国でも2016年の若年失業率は14.5%と、世界全体で最も高くなることが予想されている。同失業率は2017年には減少するがその改善ペースは遅いとみられている。

先進国では、若者は働いていても相対的貧困(所得中央値の6割未満の所得者層)に陥るリスクが高い。若者の場合、収入の低さに加え、不本意なインフォーマル雇用やパートタイム、臨時雇いで就労する場合も多い。例えばEU28カ国の2014年データによると、パートタイムまたは臨時雇いで働く若者のうち、不本意就労の割合はそれぞれ29%と37%であった。

男女格差が社会的進歩の妨げに

ILOによると、ほとんどの労働市場指標において、若年男女には大きな格差が存在し、年齢の上昇に伴う格差拡大の素地が形成されていた。このような格差は機会の不均衡の現れであり、 女性に大きな不利をもたらす根深い社会経済的・文化的問題の反映である可能性が高い。2016年の労働力率は、若年男性が53.9%であるのに対し、若年女性は37.3%で、男性より16.6%も低かった。この問題が特に深刻なのは南アジア、アラブ諸国、北アフリカの各地域である。

各国に若年雇用対策を要請

若者のための適切な雇用・社会政策を実施することが、結局のところ、世界的に包摂的かつ持続可能な社会の実現に不可欠であるとして、ILOは各国に対して若年雇用対策に積極的に取り組むよう要請している。

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