法定最低賃金、9.67ユーロに引上げ
―2015年1月の影響率は11.1%

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2016年3月

フランスの法定最低賃金(SMIC)が2016年1月から9.67ユーロに引上げられることが発表された。この引上げ公表と前後して発表された最賃影響率に関する統計数値によると、2015年1月の最賃引上げ時に最低賃金の水準で就労する雇用労働者が約170万人で、労働者全体の11.1%であることがわかった。

0.6%の小幅な伸び

フランスの法定最低賃金(SMIC)(注1)の引上げが12月14日公表された。2016年1月から実施される最賃額は9.67ユーロ。2015年1月から施行されている9.61ユーロからは0.6%の小幅な伸びにとどまる。2001年以降の最賃額と引上げ幅の推移を示したのが図表1であるが、2008年以降、小幅な引上げで推移していることが見て取れる。なお、フランスの最低賃金の引上げは物価上昇に基づいて決定される(注2)ため、物価上昇が激しい場合には年に複数回引上げられることもある。

図表1:最賃額と引上げ割合の推移
図表1:画像

出所:政府発表資料より作成

影響率は10%から11%で推移

今回の引上げに先立って最賃の影響率の数値が公表された(注3)。労働省が発表した統計によると、2015年1月1日の改定時点で法定最賃水準で就労していた労働者は169万人であり、民間部門雇用労働者の11.1%に相当する。

最賃水準で就労する労働者が全体に占める割合は、1990年から2005年にかけて、上昇を続け、2005年にピークとなり16.3%に上った (図表2参照)。この要因には、週35時間制導入に伴って賃金水準を維持するために最賃労働者に対する月額補償賃金を設定したこと等が挙げられている。2006年以降は低下し、2010年には9.8%になったが、それ以降は10%から11%前後で大きな変化がなく推移している。この安定的な推移の要因として、最賃の改定が物価上昇の連動分のみになっているからだとされる。フランスの最賃引上げは、物価上昇分のほかに、政府の判断に基づき上乗せして引上げられる制度になっているが、近年、上乗せは行われていない。

図表2:最賃影響率の推移
図表2:画像

出所:政府発表資料より作成

(国際研究部 北澤 謙)

(ウェブサイト最終閲覧:2016年3月9日)

参考資料

  • 清水耕一(2003)「フランス35 時間労働法の性格と意義」『經濟學論叢』54巻(4号), 756-790ページ、同志社大学

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