韓国雇用情報院(KEIS)が男女賃金格差について分析

カテゴリー:労働条件・就業環境非正規雇用

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  • 国別労働トピック:2015年2月

韓国雇用情報院(KEIS)(注1)が男女間の賃金格差に関する分析結果について公表している。以下にその概要を紹介する。KEISが2013年に実施した調査結果を基に、分析を行ったところ、男女間の賃金格差の要因は、勤続年数、年齢、学歴等の差で説明できる部分もあるが、そういった個人の特性による差では説明できない部分も存在し、それが31.3%を占めている。これは女性という理由だけで賃金が低く抑えられている「女性損失分」である――と、本調査は分析する。

男女賃金格差の現状

女性の高学歴化と経済活動への参加率の上昇により、男女間の賃金格差は縮小する傾向にあるものの、依然、相当規模の格差は存在している。2013年の男性に対する女性の賃金比率は70.5%の水準であった(注2)

男女間の賃金格差を年齢別に見ると、若年層では差はほとんど見られないが、30代から50代では、年齢が上がるにつれて男女間の賃金格差は広がっていき、50代半ば以降は、再び縮小していく。

男性賃金に対する女性賃金の比率を学歴別に見てみると、中卒で75.0%、高卒で73.7%、大卒では71.5%、大学院卒以上では80.3%となっている。

次に勤続年数別で見た場合、勤続年数が長くなるほど格差は拡大していくが、10年以上になると、格差は縮小していく。また、雇用形態別に見ると、男性正規職の時間当たりの賃金を100とした場合、女性正規職のそれは69.0に過ぎず、非正規職となると、更に低くなり、56.4%となる。なお、雇用形態別に見た男女の賃金格差は図表1のとおりである。

図表1:雇用形態別 男女賃金格差

グラフ:雇用形態別の男女賃金格差を表したもの

出所:韓国雇用情報院『雇用動向ブリーフ(2014年10月)』を基に作成。

※非正規職の雇用形態については、主なものを抜粋して掲載している。

勤続年数による男女の違いを見ると、女性の54.8%が勤続年数3年未満であり、一方男性の58.3%が勤続年数4年以上である。同一企業において、勤続年数が長くなれば賃金が上昇していく仕組みを鑑みれば、女性の勤続年数が短いことは、男女賃金格差の大きな要因になっている。

また、男女の賃金格差は、女性が結婚、出産、育児という経歴断絶(キャリアブレーク)を経験し、その後再び労働市場に参入する際に、以前より条件の悪い雇用形態となるという女性労働市場の特徴に大きく起因してもいる。正規職と非正規職の男女比を見ると、図表2のとおりである。女性の非正規職の賃金水準が男性正規職の56.4%であることと、女性の非正規率が23.2%であることを考えると、雇用形態の差は、男女の賃金格差を広げている大きな要因のひとつとなっている。

図表2:男女別の正規職・非正規職の比率
  正規職 非正規職
男性 84.8% 15.2%
女性 76.8% 23.2%

出所:韓国雇用情報院『雇用動向ブリーフ(2014年10月)』を基に作成。

男女賃金格差の分析 結果

以上のデータを基に、韓国雇用情報院が分析(注3)した結果によれば、男女の賃金格差のうち、男女の特性による違いで説明できる部分は52.1%となる。その内訳は、勤続年数に起因する部分が25.7%、年齢に起因する部分が12.0%、学歴に起因する部分が11.4%、その他、企業規模2.5%、雇用形態0.4%、産業0.2%と続く。

そして、男女の賃金格差のうち、特性による差異では説明できない部分が存在し、それが31.3%占める、としている。すなわち、この31.3%の部分は、女性であるという理由だけで男性より賃金が低く抑えられている「女性損失部分」であり、したがって、残りの16.6%については、男性がその生産性以上に得ている「男性賃金プレミアム」であるとする分析結果を、KEISは導き出している(図表3)。

図表3:男女賃金格差の要因
グラフ:男女賃金格差の要因を表したもの

出所:韓国雇用情報院『雇用動向ブリーフ(2014年10月)』を基に作成

と同時に、韓国雇用情報院は男女賃金格差のうち、勤続年数に起因する部分が25.7%と高いことから、女性の経歴断絶(キャリアブレーク)の予防策と、それを経たとしても、その後の良質な雇用への再進入を可能とするための支援の必要性を強調している。

参考資料

  • 韓国雇用情報院『雇用動向ブリーフ(2014年10月)』
  • NNA ASIA 2014年11月21日

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