法定最低賃金、法案が閣議を通過

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  • 国別労働トピック:2014年5月

キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)の連立政権は4月2日、史上初の全産業に対する法定最低賃金の導入法案を閣議で了承した。議会での審議、採決を経て、来年1月1日から施行される予定である。

2015年から2017年にかけて段階的に導入

法定最低賃金は時間当たり8.5ユーロとし、2015年1月1日に運用開始予定だが、当初2年間(2016年12月31日まで)は「業種レベルにおける代表的な協約当事者の労働協約による逸脱を認める」という例外規定を経過措置的に設け、2016年12月31日までに最低賃金基準を達成していない労働協約は、2017年1月1日以降、連邦全体における法定最低賃金が適用されることになる。また、最低賃金額は、定期的に見直しを行う(最初の見直しは2017年6月、効力発生は2018年1月1日)。なお、この最低賃金は、未成年者、職業訓練受講者、長期失業者の就職時(開始から6カ月)、一部のインターンに対しては適用されない。

背景に労働協約適用率の低下や貧困格差の拡大

ドイツは、ヨーロッパでは少数派の法定最低賃金制度がない国であった。その代わりに、労使は主に産別を中心に賃金交渉を行い、そこで決定された協約賃金を拡張適用することで、未組織労働者にも波及する仕組みを取ってきた。政府はこの「労使自治(Tarifautonomie)」による賃金決定を長年尊重してきたが、昨今の産業構造の変化や労働協約適用率の低下、低賃金労働の拡大といった問題が生じるにつれて、労働組合や社会民主党(SPD)から法定最低賃金の導入を求める声が強くなっていた。メルケル首相は、過去に2011年11月のCDU党大会で、法定最低賃金の導入提案をして党の承認を得たが、当時は連立相手の自由民主党(FDP)が了承せず実施には至らなかった。今回労働組合を支持母体とするSPDと連立を組んだことにより、法定最低賃金の導入に向けて大きな一歩を踏み出した格好だ。政府によると、今回の導入で370万人の労働者が恩恵を受けることになる。

参考資料

  • Bundesregierung, Kabinett beschließt Mindestlohn, 2. April 2014.
  • Handelsblatt, Handelsblatt, Kabinett beschließt Gesetzentwurf zum Mindestlohn, 02.04.2014.

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