「賃金ピーク制」支援金制度を拡大
―60歳以上定年制の義務化に向けて

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2014年1月

韓国では、努力義務とされていた60歳以上の定年制の義務化が2016年からスタートする。定年年齢の延長や退職後の雇用延長を促進するために、一定年齢以上の賃金水準を抑制する「賃金ピーク制」を導入した企業の従業員を対象に、削減分の賃金の一部を支援する制度を政府はこれまで設けていた。この制度の拡大を盛り込んだ雇用保険法改正施行令が今年1月1日に施行された。

定年延長型の支援上限額を拡大

賃金ピーク制支援金は、雇用保険制度に基づく「高齢者などの雇用促進事業」の一環として支給されており、定年延長型、再雇用型、労働時間短縮型の3つの制度がある。いずれも、賃金減額後の年間勤労所得が5760万ウォン(労働時間短縮型は5040万ウォン)を超える高額所得者を適用対象から除外している。

定年延長型は、定年年齢を延長する代わりに、一定年齢から賃金を調整する制度である。従来の制度は、定年を56歳以上に延長した事業所で18カ月以上勤務し、50歳以降の一定年齢から賃金を20%以上(優先支援対象企業は10%以上)減額された労働者に対し、年間最高600万ウォンの支援金を最長10年間支給していた。

改正施行令は、労働者の賃金を55歳以降の一定年齢から1年目に10%以上、2年目に15%以上、3~5年目に20%以上減額する事業所(300人未満の事業所は10%以上)を対象に、定年を56歳以上60歳未満に延長する場合は年間最高720万ウォン、60歳以上に延長する場合は年間最高840万ウォンの支援金を当該労働者に最長5年間支給するよう変更した。

再雇用型の賃金減額率要件を緩和

再雇用型は、定年退職後の再雇用を条件に、定年前の賃金を調整する制度(Ⅰ型)と定年退職後(再雇用後)の賃金を調整する制度(Ⅱ型)の2つがあった。従来の制度では、定年が57歳以上の事業所で18カ月以上勤務し、定年退職後に継続雇用されるか、または、3カ月以内に再雇用され、賃金がⅠ型は20%以上(優先支援対象企業は10%以上)、Ⅱ型は30%以上(優先支援対象企業は15%以上)減額された労働者に年間最高600万ウォンの支援金を最長5年間支給していた。

改正施行令は、Ⅰ型を廃止し、Ⅱ型の支援対象を定年が55歳以上の事業所に拡大するとともに、定年退職した労働者を3カ月以内に再雇用する場合の賃金減額率を20%以上(300人未満の事業所は10%以上)に緩和した。

週15~30時間以下の時短労働者に対する支援

労働時間短縮型には、定年を延長する代わりに、一定年齢から労働時間を短縮する制度(Ⅰ型)と定年退職後の再雇用を条件に、一定年齢や再雇用時から労働時間を短縮する制度(Ⅱ型)がある。Ⅰ型は、定年を56歳以上に延長した事業所で18カ月以上勤務し、50歳以降の一定年齢から、週当たり所定労働時間を15時間以上30時間以下に短縮した労働者に支援金を支給する。Ⅱ型は、定年が57歳以上の事業所で18カ月以上勤務し、定年退職後に継続雇用されるか、または、3カ月以内に再雇用され、週当たり所定労働時間を15時間以上30時間以下に短縮した労働者に支援金を支給する。2つの制度とも賃金減額率はピーク時の30%以上である必要がある。支援金額は、ピーク時賃金の70%以下に減額された部分を賃金が減額された日から最長5年間、年間300万ウォンを上限に支給する。

事業主には高齢者雇用延長支援金を支給

「高齢者などの雇用促進事業」は、ほかに、事業主を直接支援する「高齢者雇用延長支援金」の制度を設けている。

高齢者雇用延長支援金には、定年延長型と再雇用型の2種類がある。従来の定年延長型は、定年が58歳以上の事業所で18カ月以上勤務した労働者を、定年廃止または延長により継続雇用する事業主に対し、当該労働者1人当たり月30万ウォンの支援金を支給していた。支援期間は、定年延長が1年以上3年未満の場合は1年、3年以上の場合は2年である。改正施行令は、対象事業所の定年年齢を60歳以上に引き上げた。

再雇用型は、定年が58歳以上の事業所で18カ月以上勤務した労働者を、定年退職後に継続雇用するか、または3カ月以内に再雇用する事業主に対し、当該労働者1人当たり月30万ウォンの支援金を支給する。支援期間は、再雇用期間が1年以上3年未満の場合は6カ月(優先支援対象企業は1年)、3年以上の場合は1年(優先支援対象企業は2年)である。改正施行令は、対象事業所の定年年齢を55歳以上に引き下げるとともに、優先支援対象企業に対する支援期間の優遇措置を廃止した。

表:賃金ピーク制支援金
改正前 改正後
賃金ピーク制支援金
<定年延長型>
  • 定年:56歳以上の定年延長
  • 賃金減額:50歳以降
  • 賃金減額率および支援金額:20%(優先支援対象企業10%)
  • 支援金額:年間最高600万ウォン
  • 支援期間:適用日から最長10年
<定年延長型>
  • 定年:56歳以上の定年延長
  • 賃金減額:55歳以降
  • 賃金減額率:賃金の減額率を1年目10%、2年目15%、3~5年目20%
    (300人未満の事業所は10%)
  • 支援金額
  • 定年を60歳以上に延長時:年間最高840万ウォン
  • 定年を56歳以上60歳未満で延長時:年間最高720万ウォン
  • 支援期間:適用日から最長5年
<再雇用Ⅰ型>
  • 定年:57歳以上の事業所
  • 賃金減額:55歳以降
  • 労働者の所得上限:5,760万ウォン
  • 賃金減額率:20%(優先支援対象企業10%)
  • 支援金額:年間最高600万ウォン
  • 支援期間:再雇用された日から5年
<廃止>
<再雇用Ⅱ型>
  • 定年:57歳以上の事業所
  • 賃金減額:退職後
  • 賃金減額率および支援金額:30%(優先支援対象企業15%)、 年間最高600万ウォン
  • 支援期間:再雇用された日から5年
<再雇用型>
  • 定年:55歳以上の事業所
  • 賃金減額:退職後
  • 賃金減額率および支援金額:20%(300人未満の事業所は10%)、 年間最高600万ウォン
  • 支援期間:再雇用された日から5年
<労働時間短縮型>
  • 週労働15~30時間以下に短縮
  • 労働者の所得上限:5,040万ウォン
  • 賃金減額率:30%以上
  • 支援金額:年間最高300万ウォン
  • 支援期間:定年延長型(適用日から10年)、再雇用型(適用日から5年)
<労働時間短縮型>
  • 週労働15~30時間以下に短縮
  • 労働者の所得上限:5,040万ウォン
  • 賃金減額率:30%以上
  • 支援金額:年間最高300万ウォン
  • 支援期間:適用日から5年
高齢者雇用延長支援金
<支援対象>
大・中小企業の両方を支援
<定年延長型>
  • 定年:58歳以上で、定年延長または、定年廃止
  • 支援金額:年間最高360万ウォン
  • 支援期間:最長2年、1年以上3年未満の延長:1年、3年以上の延長:2年
<支援対象>
300人未満の企業のみ支援
<定年延長型>
  • 定年:60歳以上で、定年延長または定年の廃止
  • 支援金額:年間最高360万ウォン
  • 支援期間:最長2年、1年以上3年未満の延長:1年、3年以上の延長:2年
※2016年12月31日まで、従来の定年に達した労働者に限って一時支援
<再雇用型>
  • 定年:58歳以上の事業所
  • 支援金額:年間最高360万ウォン
  • 支援期間:1年(優先支援対象企業2年)、1年以上3年未満の再雇用:6カ月(優先支援対象企業1年)、3年以上の再雇用:1年(優先支援対象企業2年)
<再雇用型>
  • 定年:55歳以上の事業所
  • 支援金額:年間最高360万ウォン
  • 支援期間:最長1年、1年以上3年未満の再雇用:6カ月、3年以上の再雇用:1年
※2016年12月31日まで従来の定年に達した労働者に限って一時支援

資料出所:雇用労働部

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