上海市、若年層の長期失業者に支援策
―労働市場参入へ「出航計画」

カテゴリー:若年者雇用

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  • 国別労働トピック:2013年9月

上海市では、人的資源社会保障部と共産主義青年団との共同で、2012年から若年層の長期失業者を対象に支援策を実施している。労働市場への若者の参入を船出に見立てて、支援策は「出航計画」と名づけられ、2012年末までに同市の若者登録失業者数を10.5%減少させるなど、一定の成果をあげている。急激な高学歴化に伴って、中国の若年層では、学歴が高い層ほど失業率が高くなる傾向が目立っている。

五つの政策で構成

支援策は五つの政策で構成している。一つ目は、データベースの構築。家庭訪問などにより長期失業状態の若年者の状況について詳しい調査を行い、これを「出航計画人員情報管理システム」に登録する。情報には家庭状況・職業歴・就職への態度関心・公的扶助制度の受給状況などが含まれる。それらを基に、各人への職業訓練の斡旋などが行われる。二つ目がキャリアカウンセリングの充実。各区・県は企業の人事責任者・社会福祉の専門家・心理カウンセラーなどを集めて、失業中の若年者とその両親に対してキャリアカウンセリングを行う。三つ目が重層的な就職指導。集団指導・個人指導・定期的指導など柔軟かつ多様なサービス方式により、各若年者それぞれの需要に適応することで失業者の求職に対する自信を確立させ、明確な職業計画を持たせ、就職の機会を高める。四つ目が就職計画書の作成。職業指導を基に、失業中の若年者に確実かつ実行可能な就業計画書を制定させる。例えば、仕事経験がなく技術や能力が不足している若者に対しては、職業訓練等に参加させ、就職能力を高める。創業意欲を持つ若者には、彼らの状況に合う創業計画の作成をサポートし、創業を促す。最後に五つ目が政策の数値目標達成に向けた取り組みである。「出航計画」は「百・千・万」と題する活動を行っており、つまり「百回の就職相談会の開催、千の事業会社の動員、一万の職場の提供」、「百回の専門指導講座の開催、千箇所のインターン事業所の確保、一万人の若者(またはその親)の参加」などを目標としている。

2012年末までに「出航計画」は就職相談会を712回開催、企業の人事責任者4243人の参加、若年失業者2.53万人との面談、若年失業者またはその親2.5万人の企業等見学を達成している。

若年失業の三つの原因

若年層の失業には、一般的に言って三点が大きな原因であるとされている。一点目は若年者本人の、個人に起因するものである。多くの若年者がごく一部の安定的な国有企業や政府機関への就職を希望している。また一定数の者は賃金に対する期待が高すぎるために失業状態にある。その他、社会経験の不足やコミュニケーション能力の欠如も原因となっている。二点目は家庭に起因するものである。一人っ子政策の影響のためか親が過保護なケースもあり、親が子女の就職価値観を左右している。親の多くは子女が安定した仕事に就くことを望んでいる。最後に三点目が、若年者を受け入れる社会の側の問題である。企業は就業経験がなく、学歴水準も高くない若年者を雇用しない傾向にある。また一部の企業が提供する待遇では生活のために十分な給与を得ることが出来ず、その事が若年層に不公平感や希望の欠如を感じさせている。

高学歴層に目立つ失業

近年、中国の若年失業者は高学歴化の傾向が見られる。西南財経大学が実施した調査「中国都市部失業報告」によると、学歴が高ければ高いほど若年の失業率は上昇する傾向にある。小学卒業以下の場合が4.2%、中学・高校程度卒業者が約8%の一方で、三年制大学(大専)程度卒業者の失業率は約11.3%、大学卒業以上の者の失業率は16.4%に達している(注1)。

  1. この調査における失業率の定義は中国政府のそれとは異なる

参考文献

  • 上海市人的資源社会保障局 東方網 人民網 解放日報

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