上海市、貧困世帯向けの新政策
―医療費過重の世帯に生活保障金

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2013年9月

上海市は9月1日、「医療費支出に起因する貧困世帯への生活救助方法(試行)」を施行した。収入は最低生活保障制度の対象世帯の基準を上回っているものの、家族(世帯員)の医療費支出の負担によって、生活水準が貧困レベルにある世帯を支援しようというもので、北京市でも同様の制度の創設を検討している。

支出増による生活困窮も考慮

各地方政府は貧困世帯を対象に最低生活保障制度を実施しており、各世帯の収入状況を踏まえて(中央政府・地方政府双方の財源で)現金等を支給している(参考:2012年12月記事)。上海市が今回創設したのは、世帯収入にだけ着目するのではなく、医療費の支出状況を考慮した制度。収入が基準以上であっても、世帯員の医療費支出が過重であるために、最低生活制度で定められた最低生活の基準を満たない世帯の事例を考慮した。

対象者は上海市の都市・農村戸籍のいずれかを有する市民、および上海に居住する非戸籍保有者。非戸籍保有者の場合は次のいずれかの条件を満たさなければならない。

  • 重度の病気
  • 労働能力の喪失
  • 配偶者が男性60歳以上、女性50歳以上
  • 子女が16歳未満または16歳で中学・高校・中等職業学校のいずれかに在学―。

さらに、最低生活保障制度による受給世帯は受給できない。

申請者は下記の四つの条件を全て満たさなければならない。一点目に世帯員に対して入院治療・外来診察による重度の病気の治療・在宅看護治療のいずれかを行っている。二点目に申請前6カ月の医療費支出が世帯可処分所得を上回るか、あるいは世帯可処分所得から医療費を差し引いた額を世帯人数で除した値が最低生活保障基準より低い。三点目に申請前12カ月の世帯一人当たり可処分所得が上海市の前年度の都市住民一人当たり可処分所得より低い。最後に四点目として、世帯の財産状況が上海市の最低生活保障申請認定基準に合致することである。

給付額は全額と差額の二種類

給付額は世帯状況に応じ、最低生活保障制度で支給される額の全額、または所得との差額となる。申請前6カ月の医療費支出が世帯可処分所得を上回る場合、全額支給となる。申請前6カ月の医療費支出が世帯可処分所得を上回らないものの、可処分所得から医療費支出を差し引いた額を世帯人数で除した値が最低生活保障基準よりも低い場合は、その額と最低生活保障基準の差額が支給される。

北京市も導入を検討

北京市は8月に「首都民生事業改革発展網要(2013-2015)」を発表した。その中で低収入世帯の所得倍増計画を策定したほか、今回の上海市の新制度と類似の制度の創設を目指すとしており、その具体的な内容は今秋にも決定される見通しである。

参考文献

  • 東方網 上海市 人民網 新京報

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