労組専従者の勤労免除上限時間の見直し

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2013年8月

公労使の委員で構成される勤労時間免除審議委員会は6月13日、労働組合専従者への賃金支払いが認められる「勤労時間免除(タイムオフ)制」の上限時間の改正案を議決した。雇用労働部は、委員会の決定どおり関連告示を改正し、7月1日から施行した。

タイムオフ制導入で組合専従者34%減少

韓国では長年、労働組合専従者の賃金を使用者が支払う慣行が続いてきた。しかし、「労働組合および労働関係調整法」の改正法が2010年1月1日に成立し、同年7月1日から労組専従者への賃金支払いが禁止された。ただし、「勤労時間免除(タイムオフ)制」と呼ばれる例外規定が設けられ、労組専従者がある一定の勤労時間免除の範囲内で、賃金を削減されることなく、労使協議・交渉、苦情処理、安全衛生活動、労組の維持・運営活動などに従事することが認められた。タイムオフの上限時間は、雇用労働部に設けられる公労使各5人の委員で構成する勤労時間免除審議委員会の決定に基づき、雇用労働部長官が公表する。タイムオフ制の上限時間は3年ごとに見直すこととされている。

全国民主労働組合総連盟(民主労連)と韓国労働組合総連盟(韓国労総)は2013年1月、両労総に加盟する306事業所の労働組合を対象に実態調査を行った。同調査結果によるとタイムオフ制の導入以前に1労組当たり3.8人であったフルタイム専従者の数が、制度導入後は2.5人に減少した(34.2%減)。他方、パートタイムの専従者は1組合当たり1人から1.3人に増加した。

小規模組合と広域活動組合に配慮

勤労時間免除審議委員会は6月13日の第27回会議において、タイムオフ制の上限時間の改正案を議決した。従前は、労働組合数に基づき、1~49人は1000時間、50~99人は2000時間に区分されていた。改正案はこの2つの区分を統一し、組合員数1~99人の上限時間を一律2000時間とした(表1)。その他の区分の上限時間は据え置かれた。労働側は、従前の11区分を6区分に減らすよう要求し、使用者側は17区分への細分化を要求していた。韓国の2012年の平均年間総労働時間は2092時間である。委員会の決定により、組合員50人未満の小規模事業所も、労組専従者を1人置くことができるようになった。

さらに、組合員数1000人以上で事業所が全国各地に分布している労働組合は、分布の程度や組合活動に必要とされる時間に基づき、既存のタイムオフの上限時間に加えて、10~30%のタイムオフが与えられることとされた(表2)。追加付与されるタイムオフは、全組合員の5%以上が働く大都市地域の数に応じて、2~5地域は10%、6~9地域は20%、10地域以上は30%となっている。

今回の改正案は、勤労時間免除審議委員会の実態調査の結果に基づいている。調査結果によると、組合員50人未満の労働組合の活動時間が、タイムオフ制導入前よりも相対的に大きく減少した。また、地域分布の程度が大きいほど移動距離が長く、労働組合活動により長い時間が必要であることが分かった。

大企業の労働組合の場合、タイムオフ制の導入以来、専従組合員の数が急激に減少したが、当該組合の財務状況等を考慮し、タイムオフの上限時間は据え置かれた。

勤労時間免除審議委員会のキム・ドンウォン委員長は、「委員会の決定が、合理的な組合活動を保証し、ウィンウィンの労使関係の構築に役立つことを希望する」と述べた。

表1 タイムオフの上限時間の改正
組合員数 上限時間(年間) 使用可能人数
改正前 改正後
1人~49人 1,000時間 2,000時間 パートタイムで使用した場合、その人数はフルタイムで利用可能な人員の3倍を超えることはできない。
50人~99人 2,000時間
100人~199人 3,000時間 3,000時間
200人~299人 4,000時間 4,000時間
300人~499人 5,000時間 5,000時間 パートタイムで使用した場合、その人数はフルタイムで利用可能な人員の2倍を超えることはできない。
500人~999人 6,000時間 6,000時間
1,000人~2,999人 10,000時間 10,000時間
3,000人~4,999人 14,000時間 14,000時間
5,000人~9,999人 22,000時間 22,000時間
10,000人~14,999人 28,000時間 28,000時間
15,000人~ 36,000時間 36,000時間
表2 地域分布に基づくタイムオフの上限時間
対象 追加付与されるタイムオフの上限時間
広域自治体数 時間
全組合員1,000人以上の事業または事業所 2~5地域 事業所のタイムオフ上限時間×10%
6~9地域 事業所のタイムオフ上限時間×20%
10地域以上 事業所のタイムオフ上限時間×30%
【広域自治体数の算定基準】
  1. 広域自治体は、地方自治法第2条第1項の規定による特別市、広域市、特別自治市、道、特別自治道をいう。
  2. 広域自治体の数は、事業または事業所の全組合員の5%以上が勤務していることを基準として算定する。

参考

  • 雇用労働部ウェブサイト、韓国労使発展財団ウェブサイト、ハギョレ新聞日本語版(5月7日付)

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