政労使が雇用協定を締結
―パート雇用拡大、長時間労働削減など協力

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2013年7月

韓国労働組合総連盟(FKTU)、韓国経営者総協会および雇用労働部は5月30日、朴政権の主要公約である就業率70%の達成を目的とする政労使雇用協定を締結した。政労使は、パートタイム雇用の拡大、長時間労働の削減、60歳定年制の定着に向け賃金制度改革などに協力することに合意した。政労使雇用協定の概要は次のとおり(表1)。

企業規制の合理化と中小企業振興に基づく雇用創出

政労使は、企業が雇用を増やすための制度面の支援を協調して実施する。政府は、雇用影響評価などを通じて雇用により配慮した政策、高所得や高齢の労働者に対する雇用規制の合理化手段を立案する。雇用を増やす投資に焦点を当てた優遇税制を改善し、海外の韓国企業が韓国に戻ることを奨励する多面的支援策を講じる。

政府は、将来有望な中小企業に対する支援の強化、研究開発予算の拡大など、中小企業支援制度の改革を積極的に進める。

経済界は、大企業と中小企業から成る共同事業体を通じて中小企業の生産性を向上させるための教育訓練の基盤を構築し、労使双方にメリットのある人材育成制度を普及させる。公正な競争と取引により下請企業の競争力を高め、下請労働者の労働条件を改善する。

政労使は、工業団地のインフラ整備、文化施設や厚生施設の拡大を通じて労働環境を改善し、中小企業の仕事を魅力的なものにする。経済界は中小企業が労働力を確保できるよう、下請企業の新規採用、教育訓練に対する支援を行う。

政府は、若者の中小企業への就職を奨励するため、将来有望な中小企業に関する情報システムを整備し、若者が中小企業で長期間勤務し豊かになるための支援策を講じる。各地域で中小企業の労働環境を改善し雇用を促進するため、地方政府や労使団体、教育機関等を含む官民共同の支援制度を構築する。

公共機関・大企業の若年雇用拡大、能力本位の採用慣行普及

政府は、公共機関が2014年から2016年まで毎年、定員の3%以上の若者を採用するよう保証し、主に教育、安全、福祉の分野で採用を徐々に拡大する。また、地方の人材が新しい採用枠の一定割合を占めるよう努力する。

経済界は、2013年から2017年まで毎年、大企業が新規採用計画を立てる際、事業状況に応じて若者の雇用を増やすよう努力する。労使は、管理職と従業員の賃金を安定させ、より好ましい採用条件を創り出すことに協力する。

政労使は、若者の早期就業の必要性を認識し、職業指導・職業訓練の強化、高卒の雇用拡大、能力を基準にした採用慣行の普及に努力する。

経済界は、高卒の若者が仕事と学習を両立できるよう、職務能力に基づく採用基準を考案し、公正な採用慣行を普及させるよう努力する。政府は、特別入学枠の拡大や大学教育制度の柔軟化により、仕事と学習を両立させるためのインフラ整備に努める。

政府は、産業界のニーズを反映した職業能力評価モデルを開発し、公共機関がこれらのモデルを採用するよう支援する。学歴や経歴のみに依存せず情熱と能力を持つ若者が選抜される採用方式を普及させる。求職と就人のミスマッチを解消して若者が早期に労働市場に参入できるよう、大学の構造改革や評価制度改善を実施し、大学の競争力を高める方策を検討する。

60歳定年制の定着に向けた賃金制度改革で協力

政労使は、退職年齢の延長や賃金制度の改編により、2016年から導入される60歳定年制を定着させるよう積極的に協力する。労使は、賃金ピーク制(一定年齢を超えた場合、賃金を削減する代わりに定年延長や再雇用を行う制度)の導入や賃金構造の簡素化などの賃金制度改革に協力し、労働協約や雇用規則の改定を積極的に推進する。

政府は、(1)最低定年年齢と賃金制度に関する調査の実施、賃金モデルの開発とコンサルティングの提供、最良事例の普及、(2)60歳定年制施行前に労使間で自主的に賃金制度改革に合意した企業に対する支援、(3)労使間の自主協議促進、地方雇用労働事務所や労働委員会による労使紛争の早期解決支援、(4)60歳定年制の定着に向けた議論を行う専門家と労使団体による合同評議会の設立――などの支援を行う。

政労使は、退職した労働者(退職予備軍を含む)ができるだけ早く再就職できるよう、採用情報の提供、就職あっせん、起業支援などの再雇用支援サービスを強化し、大企業や公共部門の退職予備軍に対しても提供する。

政府は、中小企業を退職した中高年労働者(退職予備軍を含む)のための職業紹介機関を拡充し、個人の必要性に応じた訓練プログラムを提供する。専門的な知識や経験を持った退職者が引き続き報酬を得て社会活動に従事できるよう、社会貢献に関わる仕事を拡大する。

仕事と家庭生活の両立、パートタイム雇用の大幅な拡大

政労使は、労働者が積極的に育児休暇や育児のための短時間勤務を利用し、育児休暇終了後に原職復帰できるよう支援する。

政府は育児休暇で生じた空ポストに代替労働者を利用する制度を推進する。育児休業給付金の安定財源を確保するため、母性保護の費用を長期的に社会で分担する手段を検討する。また、父母が育児の心配をせずに安心して働けるよう、官民の保育施設を大幅に拡充する。

政労使は、雇用が安定し、不当な差別が無く、基本的な労働条件が保証された働き甲斐のあるパートタイムの仕事を増やすため積極的に協力する。

労使は、パートタイム労働者に対する労働時間に比例した平等な取り扱い、個人的問題に関する不利益取り扱いの禁止、パートを正社員として雇用する場合の奨励金支給などで協力する。

政府は、パートタイムの公務員を増やし、公共・民間部門におけるパートタイム雇用の創出を目的とした職務分析やコンサルティングの提供などの支援策を講じる。公共部門において家事労働や介護労働などの社会福祉関連職を大幅に拡大するとともに、社会福祉労働者の労働条件改善に関する指針の策定などの支援策を講じる。

長時間労働の削減、賃金体系の改編

労使は、法定労働時間の遵守や年次休暇の取得促進を通じて、長時間労働につながる仕事の進め方を改善し、健康で文化的な職場環境の実現に努力する。労働時間短縮による賃金減少を埋め合わせるため、生産性向上や仕事の再設計、労働者の配置転換・異動などで協力する。大企業は、下請企業がシフト制の改編により労働時間を短縮できるよう、仕事の進め方の改善や生産性向上を積極的に支援する。  

政府は、労働時間短縮により雇用を創出する企業に対し、コンサルティングや新規採用者に対する賃金助成などの総合支援策を講じる。

政労使は、労働時間短縮の影響が広範囲に及ぶ産業において、実労働時間の状況などを考慮し、長時間労働の削減に向けた対策を協議する。長時間労働慣行を改善し多様な就業形態を普及させるため、最良事例の公表や共同キャンペーンなどの社会活動を実施する。労働時間短縮による職場の負担を最小限に抑える対策のほか、時間外労働の限度時間に休日労働を含める問題に関する協議を行う。

労使は、職務と成果に基づく賃金や簡素な賃金構造への変更などの賃金制度改革の推進および労働協約・雇用規則の改定に積極的に協力する。

政労使は2013年の下半期、職場で自主的に賃金改革を進められるよう賃金・雇用センターを設立する。状況調査、最良事例の普及およびコンサルティングなどを積極的に支援するため、研究機関や専門機関、経済団体等とのネットワークを構築する。

雇用保障、労働条件の改善による仕事の質の向上

使用者はできるだけ人員整理を抑制する代わりに配置転換や異動、賃金と労働時間の調整、一時閉鎖やレイオフを検討し、労働者はこれらの措置に積極的に協力する。

使用者は、人員整理が避けられない場合、労働組合や労働者代表と誠実に協議する。影響を受ける労働者の数を最小限に抑えるため、早期退職制度の利用、退職した労働者の再雇用や再就職を支援する。

政府は大規模な人員整理による労働者の損害を最小限に抑えるため、雇用災害地区指定などの総合的支援策を講じる。

政労使は、求職者ができるだけ早く希望の仕事に就けるよう、職業相談員の増員や専門知識の強化、総合雇用情報ネットワークの構築、就職成功パッケージの拡大などに積極的に協力する。地域の必要性に応じた労働力を育成するため、地方レベルで、業界団体、訓練機関、労使団体、地方政府、地方雇用労働事務所などで構成される共同訓練ネットワークを設立する。

政府は、雇用を創出する企業を実質的に支援するため雇用助成金プログラムを見直す。求職者が生計を安定させ求職活動を容易に行えるよう、失業手当の所得代替水準引き上げやモラルハザード防止について政労使で検討し、制度的な改善策を講じる。

労使は、事業環境に応じて、高給の管理職や従業員の昇給を自主的に抑制し、賃金上昇の一定割合を非正規労働者と下請労働者の労働条件の改善に回す。

政労使は弱い立場の労働者を守るため、最低賃金の遵守、賃金支払い遅延の防止、雇用契約の文書化を厳密に履行する。

政府は零細な職場や低賃金で働く労働者の雇用保険料や国民年金保険料に対する助成を拡大し、政労使は社会保険制度への参加を促す共同キャンペーンを実施する。

大企業に雇用形態別の労働者数の公表を義務化する雇用状況開示制度の実施に伴い、労使は、正社員の採用拡大、非正規労働者に対する差別の撤廃や能力向上によるキャリア開発に積極的に協力し、雇用構造の改善に努力する。

政府は、賃金、賞与や付加給付等の不当な差別をなくすため、労働基準監督官の差別是正指導を強化するとともに、2015年までに公共部門の非正規労働者を正規労働者に転換する。主要産業における労働監査を実施し、違法派遣が見つかった場合は、元請企業に違法派遣労働者を直接雇用するよう指示するなど、違法派遣の根絶に努める。経済社会開発評議会の検討結果に基づき、特殊な雇用形態の労働者(宅配ドライバー等)を保護する対策を講じる。

表1:雇用率70%達成のための政労使雇用協定の主な内容
雇用創出基盤づくり 企業規制の合理化、税制支援、大企業・中小企業の共同人材育成システムの構築
パートタイム雇用・
社会サービス雇用拡充
安定した差別のない質の高いパートタイム雇用拡大への協力、家事介護などの公共社会サービス雇用拡充
若者・中高年・女性の雇用拡充 公共機関の定員の3%以上の若者を新規採用、大企業は2017年までに若者の新規採用を前年に比べ増加、従業員の賃金の安定、賃金ピーク制などの賃金体系改編
将来の雇用創出 労働時間短縮推進、賃金・雇用センター設置
労使責任および協力の強化 人員整理の自制、公共部門非正規労働者の正規労働者への転換、大企業の雇用構造の自主的改善、高賃金従業員の賃金引き上げ抑制、労働法遵守、特殊形態業務従事者の保護計画を立案
社会対話の継続推進 経済社会発展労使政委員会の議題および参加範囲の拡大

出所:雇用労働部

参考

  • 韓国雇用労働部Web情報

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