小売業の労働協約、使用者団体が解約を告知
―労組側は猛反発、ストも辞せずの構え

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2013年3月

ドイツ小売業連盟(HDE)は1月24日、統一サービス産業労働組合(ヴェルディ)と締結している小売業に関するすべての賃金協約および包括協約の解約を同労組に告知した。この異例事態に、労組側は猛反発し、ストライキも辞さない構えを見せている。

270万人の労働者に影響

小売業の各協約は通常、地域ごとに適用されるが、今回の解約告知ではドイツ全土の使用者が一斉に協調行動をとったため、全国270万人の小売業労働者に影響が出ることが予想されている。ヴェルディは今春、包括協約はそのままで賃金交渉のみを行う予定であったが、今後は両方の交渉を行うことを余儀なくされ、激しい賃金・労働条件交渉に発展する可能性が高い。

今回のHDEの解約告知について、ハンスベックラー財団経済社会研究所(WSI)のラインハルト・ビスピンク研究員は、「ある産業の全ての賃金協約と包括協約の完全解約が告知されることは極めて異例であり、近年にはなかったことだ」と語る。同氏はさらに、「小売業には女性のパートタイム労働者、低賃金、長時間労働、週6日労働が多いことが特徴として挙げられるが、近年の“同業者間の熾烈な競争”の中で、賃金や労働条件はますます競争要因となっており、主に女性労働者が賃金/労働条件切り下げの影響を受けている。また、現在は、労働協約に拘束されない小売業の使用者が多数存在し、このことが産業全体の最低賃金導入に関する交渉成果が得られていない一因となっている」と語った。

使用者、労働協約の近代化を求める

ドイツ小売業連盟(HDE)のヘリベルト・イェリス労働協約執行役員は、解約告知を行った理由について、「現在の労働協約は多くが1950年代に締結されたまま、時代遅れになっている。例えば一連の協約には、未だにエレベーターボーイ、ナチス時代の旧国防軍職員、高射砲助手、戦時捕虜帰還者に対する規定などが残っている。そのため協約を近代化し、多くの企業にとってより魅力的なものにすることで、労働協約適用率の低下の食い止めを目指す必要がある」と述べた。実際に労働市場・職業研究所(IAB)の調査によると、小売業で働く労働者のうち現在の労働協約に拘束される企業で働いているのは約半数にまで落ち込んでいる。労働組合側もこの問題に気づいており、2002年から解決のための話し合いを労使で進めてきたが、ヴェルディ側が「使用者は、労働協約の改訂に絡んで各ポストの労働条件を体系的に格下げしようとしている」として、昨年夏に離脱して以降、労使の話し合いはストップしていた。そのため先述のイェリス氏は、「今後予定されている賃金交渉の中で、現行の労働協約のうち少なくともいくつかの緊急の項目について、労使で取り組めることを期待している」と語った。

労組、ストも辞さず

今回のHDEの行動について、ヴェルディのシュテファニー・ヌッツェンベルガー商業部門の連邦執行委員は、「HDEは、小売業労働者に対する重要な保護規定を格下げしようとしており、小売業で働く270万人強の労働条件の悪化をもくろんでいる」と述べ、対決姿勢を強めている。また、ヌッツェンベルガー氏は、「HDEは、連邦労働社会省(BMAS)が支援する高齢化に対応した労働設計を目標とする『人口動態・労働協約プロジェクト』への協力も拒否し、小売業の最低賃金を導入するための前提条件の整備に取り組むことも長年にわたり拒絶している」と指摘し、「小売業の労使関係を悪化させ、さらに賃金ダンピングも容認しようとしている」とHDEを強く批判した。

すでにバーデン・ヴュルテンブルク州地区のヴェルディ代表者からは「スト」という言葉も出ており、「我々は、バーデン・ヴュルテンブルク州の小売業労働者は、効果的かつ粘り強いストができることを近年、何度も立証してきた」と述べ、今後の交渉で一歩もひかない構えを見せている。

参考資料

  • ver.di-Bundesvorstand Pressemitteilungen(24.01.2013), Handelsverband Deutschland Pressemitteilungen(24. Januar 2013), Handelsblatt(25.01.2013)

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