求職者支援策、選択と集中の体制へ
―依然残る地域間格差

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2013年10月

政府の発表によると8月の失業者数は27カ月ぶりの減少ということになったが、国立統計経済研究所(INSEE)が発表した第2四半期の失業率は、前期比で1ポイント上昇して10.5%となり、依然として高い水準にある。雇用局(Pôle emploi)による失業者の雇用復帰のための施策は、より困難な状況にある失業者を優先的に支援する戦略的な推進体制を整えている。その一方で地域別の視点では、失業率の高い地方に必ずしも雇用局の職員は手厚く配置されておらず、求職者支援の体制における地域間の格差が明らかになった。

失業者数、8月に27カ月ぶりの減少

政府の発表によると、2013年8月の失業者数(フランス本土、カテゴリーA)注1は323万5700人、前月比で5万人の減少となった(注2)。失業者数の減少は2011年4月以来、27カ月ぶりとなる。ただ1カ月間の推移では今後失業の減少傾向が継続するのかを判断することはできないとの慎重な見方もある。というのは、今回の失業者の減少は登録抹消による影響も少なくないからだ。失業者の登録は、雇用局へ毎月出向く義務などを怠った場合に抹消される。8月に登録抹消された人数は通常の月より多かった。例年月間19万から21万人を推移しており、5月=20万1200人、6月=20万9800人、7月=20万人であったが、8月には27万7500人が登録抹消された。8月抹消分のうち一部は再登録を経て9月の失業者数に加算されるため、失業者数の減少傾向がこのまま継続するのかは不確実な要素も多い。

失業者を3類型化し戦略的に

厳しい雇用情勢への対応として、雇用局は失業者への支援を戦略的に行う体制を整えている。雇用復帰が困難な失業者に対して優先的に支援するという内容である。カテゴリーAとBの求職者390万人のうち、約140万人が優先的に支援を受けることになる。

9月1日の時点で、雇用局では237万人の失業者に対して、2万500人の職員が対応しており、単純計算では1人の職員が担当する失業者は約116人ということになるが、1人の職員が300人の失業者を対応するという支局もあったという。今後は、失業者を3つに類型化し雇用復帰支援を選択・集中的に行うことになる。

まず、雇用復帰が困難な長期失業者13万3000人(求職者の6%に相当)に対して、3000人の職員が対応することになる。平均では職員1人当たり約44人の失業者に専念し、最大でも70人を担当する体制になる。雇用局ジャン・バセレス事務局長によると「この一年間に雇用復帰支援の専門アドバイザー数を6倍に増員したことによって、失業者へ眼の行き届いた体制となった」。その上で、次に雇用復帰が困難とされる130万人(求職者の55%に相当)に対して1万2400人の職員が担当する。職員平均107人、最大でも150人の体制となる。それ以外の求職者93万4000人に対しては、職員5100人が対応することになる。平均では1人当たり約183人であるが、最大でも200人から350人を1人の職員が担当することになる。

高失業率地域で職員数少ない傾向も

その一方で雇用局が9月20日に公表した資料によると、職員の配置に地域間格差があることが明らかになった。全国に約1000カ所の支局があるが、全国平均すると職員1人当たり担当する失業者数は116人だが、地域間で比較した場合、最も多いのはフランス本土の北部のドゥエー郡(ノール・パド・カレー県)で、職員1人当たりの失業者数が192人である一方で、リル・ルッス(コルシカ島北部)では32人であり、6倍の格差がある。2013年第1四半期の地域別失業率において、ノール・パド・カレー県では14.1%で全国平均の10.4%を大きく上回っていたのに対して、コルシカ島は平均を下回る10.2%であった。失業率の高い地域で職員が少ないという傾向が確認されたことになる。2010年にも職員の配置に関する類似のデータを公表しているが、大きな変化は見られなかった。

参考資料

  1. 労働省ホームページリンク先を新しいウィンドウでひらく
  2. 国立統計経済研究所(INSEE)ホームページリンク先を新しいウィンドウでひらく
  3. Pôle emploi concentre ses efforts sur un chômeur sur deux, Les Echo, 19 septembreリンク先を新しいウィンドウでひらく
  4. Les vrais chiffres de Pôle Emploi, Le Parisuen,リンク先を新しいウィンドウでひらく
  5. 労働省ホームページリンク先を新しいウィンドウでひらく

(ホームページ最終閲覧:2013年10月1日)

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