移民統合の状況を国際比較
―OECD、指標用いて報告書

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2013年1月

経済協力開発機構(OECD)は12月、各国の移民統合の状況を各種指標で国際比較した報告書を発表した。OECDがこの種の報告書を出したのは初めて。報告書の分析は住宅・医療・教育・労働など多岐にわたっている。そのうちの労働分野を以下に概説する。

欧州経済危機が移民を直撃

報告書は労働分野の特筆すべき事項として、金融危機の発生以前、新規に流入してきた移民はそれ以前に流入した移民よりも、労働市場において高いパフォーマンスを発揮していた、と指摘している。これは複合的な要因によるものだが、2000年以降の各国の雇用状況の改善や、各国政府が労働市場において移民労働者との統合を押し進めたことなどが影響している。しかしこうした恩恵を受けた移民労働者たちも、現在の欧州の経済危機の中では厳しい状況に直面している。

言語以外の問題に苦しむ移民2世

移民がその国の労働市場で成功するためには、その国の労働市場に対する理解や人的ネットワークの構築ももちろん大事な要素であるが、さらに重要なことは言語能力である。そうした点では、移民2世はその国で育ちその国で教育を受けているので、言語の障壁は低いはずだ。つまり、労働市場において移民2世と非移民は同等の機会を得られるべきだと考えられる。しかし現実にはそうではない。いくつかの国では両親が外国生まれである場合、そのことが採用の段階で不利に働くことがしばしばある。

労働市場に参入していない15~34歳のいわゆるニート層に属する移民は、OECD平均で約17%存在している。そして非移民と移民2世を比較すると、移民2世のほうがニートになりやすい傾向にある。移民2世のニートの割合が低いのは順にカナダ、デンマーク、ルクセンブルク、スロベニア、スイスで、いずれも10%に満たない。一方で高いのは、41%のスペインを筆頭にチェコ、ベルギー、イスラエルと続く(図1)。

図1:各国の移民2世と非移民におけるニートの割合(単位:%)

図1:各国の移民2世と非移民におけるニートの割合(単位:%)※OECD平均で約17%

出所:OECD

移民と自国生まれの者の格差は、一部の国では改善の兆しが見られる。(図2)は2000-01年から2009-10年における、移民と自国生まれの者の就業率の差の拡大・縮小を表している。もちろん、概して就業率は移民よりも自国生まれの者のほうが高いのだが、この期間中、フィンランド、デンマーク、英国などでは、その差の縮小が見られる。一方でスペイン・メキシコ・アイルランドなどでは、その差が拡大しており、移民にとって状況が悪化したことを表している。このように移民・自国生まれの者の格差の状況は国ごとに様々だ。なお米国にいたっては、2000年の時点で既に自国生まれよりも移民の方が雇用されやすいという特殊な傾向にあったが、2010年時点でその差は更に拡大しており、自国生まれの者の状況がより厳しくなっている。

図2:自国生まれの者と移民の就業率の差の変化
(2000-01年から2009-10年にかけて、単位:%)

図2:自国生まれの者と移民の就業率の差の変化

出所:OECD

女性移民が、単純労働に就きやすい傾向に

単純労働に従事する者の割合は、OECD平均で自国生まれが7%、移民が16%となっており、大きな隔たりがある。ただしこれも国ごとに状況は異なっており、オーストラリアやカナダには高技能移民労働者が比較的に多く流入している一方で、南欧諸国では単純労働者の割合が高い。単純労働者はとりわけ女性移民にその傾向が強く、ギリシャやイタリアでは約半数の女性移民が単純労働に従事している(図3)。

図3:自国生まれ、外国生まれの者の男女別単純労働従事者の割合
(15-64才、単位:%)

図3:自国生まれ、外国生まれの者の男女別単純労働従事者の割合

出所:OECD

参考資料

  • OECD Indicators of Immigrant Integration

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