労働社会省管轄の制度、主要な変更内容
―1月から求職者基礎保障などを

カテゴリー:労働法・働くルール

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  • 国別労働トピック:2013年1月

求職者基礎保障、労働市場政策、社会保険など労働社会省が管轄する制度の内容が2013年1月1日からいくつか変更された。以下、主なものを紹介する。

1.求職者基礎保障給付の引き上げ

ハルツ第4法に基づく求職者基礎保障給付が、従前の374ユーロから382ユーロ(成人1人あたりの標準月額)に引き上げられた。

「求職者基礎保障制度」は、長期失業者とそのパートナー等の生活保障を目的としており、「ハルツ第4法(Hartz IV)」に基づき「社会法典第2編(SGBⅡ)」で規定している。給付の中心となるのは「失業給付Ⅱ(注1)」で、長期失業者や就業能力のある生活保護受給者に、就労を促す目的で2005年に創設された。給付対象のほとんどは長期失業者であり、その多くが職業教育を受けていない無資格者や低資格者である。なお、2010年の失業給付Ⅱの受給者数は、年平均で約489万9000人だった。

表1.求職者基礎保障の標準給付額(月額)
受給資格者 2013年1月1日~
・単身者(成人1人あたりの標準月額)、 単身養育者(ひとり親) 382ユーロ
・家計を一にして同居するカップル 345ユーロ
・独自の家計を営まない/パートナーと家計を一にしない成人の受給権者 306ユーロ
・14歳~17歳の子ども 289ユーロ
・6歳~13歳の子ども 255ユーロ
・0歳~5歳の子ども 224ユーロ

資料出所:連邦労働社会省(BMAS)2012

2.操業短縮手当の給付期間延長を再び

2012年12月に発効した「操業短縮手当の受給期間に関する命令(Verordnung uber die Bezugsdauer fur das Kurzarbeitergeld)」に基づき、2013年12月31日までに操業短縮手当(Kurzarbeitergeld)への請求権が発生する労働者に対して、給付期間が6カ月から12カ月に延長された。これにより、使用者の計画の安定性が担保されることになる。

操業短縮手当は、操業短縮に伴う労働者の収入低下に対してその一部を補償する助成策の一つである。企業が経済的要因等から操業時間を短縮して従業員の雇用維持を図る場合、連邦雇用エージェンシーに申請すると操業短縮に伴う賃金減少分の一部(減少分の 60%、扶養義務がある子供を有する場合は 67%)が補填される。操短手当自体は1969年に創設されたものだが、2008年秋以降の世界的な経済危機に対応するため、時限的措置として給付期間を従来の6カ月から18カ月に延長した。その後、2009年初夏には新たな措置の中で最大24カ月に延長し、2009年末、および2010年5月にも拡充措置の延長がなされた。この制度拡充の結果、操短労働者数は、2009年に大幅に増加したが、2010年の景気回復とともに再び減少に転じ、従来の6カ月の給付期間に戻っていた。

3.ミニジョブの報酬上限額の引き上げ

ミニジョブ(僅少労働)の報酬上限が従前の月額400ユーロから450ユーロに引き上げられた。同時に、労働者に段階的に社会保険負担が発生する「ミディジョブ(累進ゾーン)」の月額報酬も400~800ユーロから450~850ユーロに引き上げられた。さらに、ミニジョブ就業者は、法定年金の加入が義務付けられることになるが、申請によって加入義務の免除も可能となる。

ミニジョブとは、月収400ユーロ以下の場合に、所得税と社会保険料の労働者の負担分が免除される制度である(使用者は免除されず、疾病保険と年金保険、税金分として一律30%の負担義務がある)。2003年の「ハルツ労働市場改革(注2)」で、ミニジョブの報酬上限を325ユーロから400ユーロに引き上げた代わりに、週労働時間の制限(上限15時間)を解除し、時給の下限が事実上廃止された。これにより、以降、この雇用形態が急速に拡大し、最新の統計によると、2011年12月時点でミニジョブ労働者は計750万人と、前年比較で12万人増加し、2003年のハルツ改革以降、約200万人増加している。このうち、ミニジョブの専業従事者は490万人で、本業のほかに税負担のない副業としてミニジョブに従事する者は260万人であった。 また、現在ミニジョブ労働者が多い産業は、主に小売業、飲食店、宿泊業である。保健・医療施設や福祉施設、ビル清掃業などでも多数のミニジョブ労働者が働いている。

なお、今回の制度変更には2年間の経過措置が設けられている。報酬が400.01ユーロから450ユーロの範囲にある既存の就業関係については、ミディジョブ者がミニジョブ者に含まれると疾病保険や失業保険の保護を失ってしまうため、これを避けるため、該当者は2014年末まで従来法に基づき、ミディジョブのままとされる。

また、ミニジョブの上限が月額450ユーロに引き上げられるのに伴い、法定年金法における追加報酬の上限も変更される。通常老齢年金の支給年齢に達する前に老齢年金を満額年金として請求する者、または稼得能力の完全低下による年金を満額で請求する者は、2013年1月1日から月額450ユーロまでの追加報酬を、年金の減額なく得ることができる。通常老齢年金の支給年齢に達している者(2013年:65歳2カ月)は従来通り追加報酬の上限を守る必要はない。

4.法定年金の保険料率ほか

法定年金保険の保険料率は、一般保険では18.9%、鉱山従業員年金保険では25.1%となり、法定年金保険における任意加入保険の最低保険料は、月額85.05ユーロとなった。芸術家社会保険分担金の分担率については、従前の3.9%から4.1%とへと引き上げられた。

5.年金支給開始年齢の引き上げ

2012年から2019年までに法定年金保険における年金支給開始年齢が65歳から67歳に段階的に引き上げられる。これに伴い、2013年1月からは1948年生まれの被保険者は65歳2カ月で法定の年金支給開始年齢に達することになる。1949年以降の出生年については、法定の年金支給開始年齢がまず1年ごとにさらに1カ月引き上げられる。将来的には出生年ごとに2カ月ずつ段階的引き上げを行い、1964年以降に生まれた者に対しては、はじめて法定年金支給開始年齢が67歳となる。

6.障害者政策に関する変更

新しい重度障害者証明書の交付が可能になり、さらに使いやすくなる。視覚障害者の新しい証明書は、点字形式で識別することができ、重度障害者への注意事項には英語版も新たに含まれる。正確な切り替えの時期は各州が独自に決定するが、遅くとも2015年1月1日以降には新しい証明書しか交付されなくなるが、引き続き旧式の証明書も有効とされる。また、2013年1月1日から、公共旅客交通における重度障害者の自己負担額が月額5ユーロから6ユーロに引き上げられる(年額72ユーロ)。これは1984年以来の改定となるが、低所得者(特に基礎保障受給者)、視覚障害者および全介助者については引き続き自己負担は免除される。

参考資料

  • Bundesministerium fur Arbeit und Soziales Pressemitteilungen(18.12.2012), Bundesagentur fur Arbeit (20.12.2012), Presse- und Informationsamt der Bundesregierung(12. Oktober 2012)

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