貧困率が上昇、大都市が全国平均を上回る

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2013年1月

ハンスべックラー財団経済社会研究所(WSI)の最新調査によると、貧困率は大都市の方が高く、近年、その率が上昇し、全国平均との差が広がっていることがわかった。2011年の貧困率は、全国平均15.1%に対し、大都市19.6%で、2005年時点と比較すると、大都市では2.1ポイントも上昇し、全国平均の0.4ポイント増を大きく上回っている。

貧困ライン以下の層、大都市で5人に1人

本調査は、マイクロセンサス(小規模国勢調査)に基づく連邦統計局の最新データを用いて行われた。貧困の定義は、「所得中央値の60%未満の可処分所得しかない場合」とされる。この定義に従い、2011年は単身者の場合で所得月額848ユーロ未満の者が「貧困者(=貧困ラインを下回る者)」と見なされた。

貧困率の推移をみると、2005年から2011年にかけて全国平均では14.7%から15.1%と0.4ポイントの上昇だったのに対し、大都市(15都市)では同時期に17.5%から19.6%と、2.1ポイントも上昇した(図1)。大都市の貧困率を人口に換算すると約1400万人となり、約5人に1人が貧困ラインを下回って生活していたことになる。

図1:貧困率の推移(2005~2011年)

図1:15大都市とドイツ全国平均における貧困率の推移(2005~2011年)

  • 貧困率:所得中央値の60%未満の可処分所得しかない場合
  • 出所:ハンスベックラー財団2012

背景に所得格差・低賃金層の拡大か

WSIでは、近年、経済が安定して失業が減少しているのに貧困が増加している点について、「所得格差や低賃金層の拡大」が関係しているのではないかと見ている。分析を行ったWSIのエリック・ザイルス氏は、「失業と貧困の関連性が、最近はやや弱い傾向にある」と見る。同氏は「国内における貧困率の増加―特に大都市での増加―は、所得格差の拡大や低賃金部門の成長と関係している可能性があり、貧困ラインを下回る賃金で働く者が、特に大都市圏で増えているためではないか」と分析している。

貧困率高い東部地域

15の大都市を個別にみると、大半が全国平均の15.1%を上回っていることが分かる(図2)。特に東部のライプツィヒやドレスデン、ルール地方のドルトムントやデュイスブルクで貧困率が高く、首都ベルリンでも、人口の21.1%が貧困ラインを下回り、その割合は2006年以降増加している。そのベルリンで現在問題になっているのは、SGBII(社会法典第2編)に基づき、長期失業者や低賃金労働者に給付される失業扶助()の受給者割合が非常に高い(20.7%)ことである。

こうした状況と比較して、南部の大都市では、他の地域よりも貧困率が小さく、特にミュンヘンでは貧困率が11.8%と、全国平均を下回り、SGBIIの受給者割合も6.6%と低かった。

図2:15大都市の貧困率

図2:15大都市の貧困率(SGBⅡの受給者割合と貧困率)

出所:ハンスベックラー財団2012

ハンスベックラー財団経済社会研究所(WSI)では、大都市における貧困の集中と拡大は今後も続くと見ており、貧困拡大を食い止める具体的な政策を早急に実施する必要があるとしている。

資料出所

  • Hans-Böckler-Stiftung(Böckler Impuls 18/2012), eironline(29 October, 2012), Lebenslagen in Deutschland―Entwurf des 4. Armuts- und Reichtumsberichts der Bundesregierung(21.11.2012)

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