所得倍増計画、カギ握る格差縮小
―党大会で目標、2020年までに達成―

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2013年1月

中国共産党は11月に開いた第18回党大会で、国内総生産(GDP)と国民一人あたりの所得を2020年までに2倍にするとの目標を報告した。過去の経済成長などの実績から、この目標は決して実現不可能ではないとの見方が有力だ。しかし、目標を達成したとしても、高所得者の所得増に偏る格好になると、格差のさらなる拡大につながる恐れがある。そうした事態を避けるため、政府はインフレ抑制や同一労働同一賃金などを柱とする工資条例の制定など前政権が積み残した課題に力を入れる。

過去10年の経済成長、格差は拡大

2012年11月、中国共産党第十八回大会報告において、GDPと一人あたり所得の双方で2020年までに2010年比で2倍にするとの目標が発表された。第16回(2002年)共産党大会では2020年までにGDPを2000年比で4倍にすること、第17回(2007年)共産党大会でも2020年までに一人あたりGDPを2000年比で4倍にするとの目標が発表されていた。今回はこうしたGDPに係る指標に加え、所得に関する目標も掲げた形だ。

なお、過去10年を振り返ってみると、目覚しい経済成長を遂げたことは間違いないが、その一方で格差の縮小は達成されていない。経済成長に伴い人民の所得は都市・農村の双方で向上したものの、2002~2011年の都市・農村格差は改革解放後で最も開いた状態で推移した(図)。

図:都市・農村の平均所得とその所得格差(左軸:元/年、右軸:倍)図:都市・農村の平均所得とその所得格差(左軸:元/年、右軸:倍)1978-2011年

出所:統計局

インフレ抑制と工資条例など制定が成否の鍵に

10年間でのGDP、一人あたり所得の倍増という目標は、過去数年の経済成長よりも緩やかな成長であっても達成でき得るため、十分に可能との見方がある。

そして、一人あたり国民所得の倍増という目標が仮に達成できたとして、それと同時に格差縮小も達成できるかが、大きな関心の的となっている。すなわち、既に高い所得を得ている人がこれまで以上に所得を伸ばし、一方で低所得者の所得増加が微々たるものであった場合、平均所得は確かに倍増し得るのだが、格差はこれまで以上に拡大する恐れがある。

そして、その格差縮小の鍵になるのは、インフレ抑制と工資条例、工資支払条例の制定と見られている。

過去数年、中国は不動産価格や食料品の高騰をはじめとするインフレに悩まされてきた。インフレ抑制は低所得層に比較的に恩恵を与え、生活改善に寄与すると見られる。

また制定が棚上げとなっている工資条例が制定された場合、直接雇用者と派遣労働者の同工同酬(同一労働同一賃金)、金融業やエネルギー関連産業のような参入障壁が高く賃金水準も高い産業への政府介入による賃金抑制などが進むと見られる。

さらには工資支払条例が成立すれば、企業が倒産した際の賃金保障、出稼ぎ労働者への賃金支払に対する滞納への罰則強化等が実施される見通しだ。なお工資支払条例については、現在人的資源社会保障部で制定作業を実施中である他、北京や広東では既に地方法規として施行済みだ。

ただしこれら3つの政策は、いずれも過去10年の間に取り組んできて、残念ながら十分には達成できなかった政策だ。例えば工資条例の制定は、国有企業の強い反対もあり今までにも幾度も頓挫している。過去10年で未達に終わった政策が、今後10年で達成できるか否かが、和諧社会(調和のとれた社会)の達成の鍵を握っている。

参考資料

  • 統計局、人的資源社会保障部、中国新聞網、中国経済週刊、財新網

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