不法就労対策を強化、高度人材の獲得も
―改正出入国管理法、来年7月施行―

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2012年8月

全国人民代表大会代常務員会は6月、出入国管理法改正を可決した。改正法は、急増する外国人滞在者の管理強化をねらいの一つとし、就労ビザによる最短滞在期間を180日から90日間に短縮した。一方で、国内で不足している高度人材の確保も意図し、高度人材向けの「タレントビザ」を創設した。来年7月1日に施行する。

滞在期間、半年以下を焦点に

改正法()について、全人代法律委員会の張福委員長は「この改正は、外国人の一時的労働者のうち、滞在期間が半年を超えない者が焦点となっている」と述べている。

不法に滞在した場合、悪質な事案に対しては1万元を超えない範囲で1日につき500元の罰金または5日以上15日以下の拘留処分が下される。不法就労に対しては、使用者および就労者を紹介した者に対して罰金が科される。使用者に対しては、10万元を超えない範囲で不法な雇用1人につき1万元の罰金を科す。紹介者に対しては5万元を超えない範囲で不法な紹介1人につき5000元の罰金を科す(紹介者が組織の場合は、10万元を超えない範囲)。

外国人の使用者に対する法規としては、「労働者への労働報酬を支払わなかった者は、国務院関連部門または省、自治区、人民政府が出国の禁止を決定した場合、出国が禁止される(第28条)」という内容が盛り込まれている。

また、改正法は、高度人材獲得のための「タレントビザ」の創設に言及している。「専門の人材、投資家あるいは人道的な理由等で滞在要件を変更する者には滞在許可証が発行され得る(第31条)」と記されており、その内容の詳細については未だ公表されていないものの、将来的に外国人の高度人材獲得のためのビザ制度が創設されることが予想される。

背景に急増する外国人

不法入国・不法滞在・不法就労のいわゆる「三非外国人」に対する罰則強化の背景には、合法不法を問わず外国人の滞在者・労働者が急増していることがある。近年の急激な経済成長という要因もあり、外国人は増加の一途だ。2000年に7.4万人であった外国人就労者は、2011年には22万人まで増加している。2011年に警察が不法入国・不法滞在・不法就労として調査した事案は2万件に上り、1995年から倍増している。今年に入ってからは、不法滞在の外国人による犯罪の事案もたびたび報道されている。北京市はこうした事態を受けて、今年5月より「100日キャンペーン」と称して不法滞在者の取り締まりを強化している。

高度人材の育成、国内で達成できず

改正法に、三非外国人に対する罰則強化をいう厳しい内容を盛り込んだ一方で、「タレントビザ」の創設に言及した背景には、国内で高度人材を十分に確保出来てない点がある。

現在国内では、各地に重点大学・重点研究施設を設置・認定するなどして高度人材の育成に取り組んでいる。しかし、ここ10年で2倍以上に大学生が増加する一方で、教員の質・量は共にそれに追い付いておらず、高度人材を十分には育成できていない。

また現在中国政府は海外に留学した者への帰国支援も積極的に実施している。留学生に対して帰国後の住宅や戸籍、税金の面で優遇する「長江学者奨励計画」や「千人計画」だ。しかし計画は順調とは言えず、1978年の改革開放以来、述べ191万人が海外に留学したが、そのうち国内に帰国したのは63万人に留まっている。

今回の「タレントビザ」創設は海外の自国人材にとどまらず、外国人の高度人材についても獲得を強化するものだ。人的資源社会保障部の尹部長は「外国人の高度人材に対しては、税金、社会保障、子女の教育や研究資金の調達等で利益が得られるような政策を実施したい」と述べている。

資料出所

  • 海外委託調査員、中央人民政府、チャイナデイリー

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