空前の高卒採用ブームに
―政府の働きかけが奏功

カテゴリー:人材育成・職業能力開発

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  • 国別労働トピック:2012年7月

韓国では、1998年の経済危機後の高卒採用の減少と学歴偏重の傾向により、高校卒業生の就職が非常に困難な状況となっていた。韓国政府は昨年から、高卒の採用枠を拡大するよう、企業に対して精力的な働きかけを行ってきた。その結果、韓国は今年、空前の高卒採用ブームを迎えている。

大企業、前年比6.9%増の採用計画

今年の30大企業グループの採用計画は合計12万人(前年比2.2%増)となり、このうち高卒採用が3万7,000人(前年比6.9%増)と全体の31%を占めている。

韓国最大の企業グループ、サムスンは今年の採用予定数2万6,000人のうち、高卒を9,000人採用する計画である。サムスングループはこれまでも、採用で学歴制限は設けなかったが、実際に採用されたのは大卒のみであった。今年は、事務職に高卒を採用する予定であると発表した。LGグループは、今年の採用予定数1万5,000人のうち、高卒の採用枠を5,700人に急拡大させた。ポスコグループも今年の採用予定数6,700人のうち、過去最多の高卒3,100人を採用する予定である。ロッテグループは1万3,500の採用を予定しており、学歴基準を緩和し、高卒以上であれば誰でも応募できるようする。SKグループは7,000人の採用を予定しているが、創立以来はじめて250人の高卒採用枠を設けた。

企業が高卒採用を拡大する理由としては、定年退職に伴う人材の確保と技術者の技能伝承、人件費の削減などが挙げられる。韓国では「非正規労働者を減少させよ」という世論が高まり、非正規労働者の採用が難しくなっている。高卒新入社員の年俸は2,000万~3,000万ウォンで、大卒の年俸の65~85%の水準である。企業は、高卒採用を人件費削減のための手段にしている。

高卒、業務が多様化、処遇にも変化

高卒がはじめて就く仕事は単純な業務が多い。高卒の就職先は卸小売・飲食・宿泊業が42.1%を占め、鉱業・製造業分野は22.7%にとどまっている。業務内容もサービス・販売従事者が45.3%で最も多く、単純労務従事者が34.8%となっている。

高卒と大卒の賃金格差も顕著である。高卒就業者の昨年の平均賃金は145万5,000ウォンで、大卒以上より42万7,000ウォン、短大卒以上より12万7,000ウォン低い金額となっている。昇進についても高卒は不利といわれてきた。

しかし、最近は、単純業務に限定されていた高卒社員の業務が多様化している。学歴よりも能力を重視し、処遇格差を減らそうとする企業もでてきている。サムスングループは、グループ一括で高卒社員を選抜し子会社に配置していたため、学歴志向になりがちであった。最近は系列子会社が、特定の業務に合わせて人材を登用するのが一般的となっており、これが高卒採用に追い風となっている。ロッテは、高卒社員が就職後2~4年働いた後は大卒と差別せず、年俸や昇進を能力評価に基づいて決定する人事制度に変更した。これによって、専門性を備えた技能職の高卒社員にも専門家、専門委員や役員への昇進機会が与えられるという。

企業、優秀な人材確保へ様々な取り組み

企業にとっては優秀な人材をいかに確保するかが課題となっており、採用に関する様々な取り組みを実施している。

SKコミュニケーションズは、スマートフォンアプリのコンテストで入賞した高校生を採用した。サムスンや現代重工業は、全国技能コンクールや国際技能五輪のメダル受賞者の採用に力を入れている。両社を含む15社は2006年末に、韓国産業人力公団とともに技能競技大会入賞者の採用を支援する「技能奨励協約」を締結した。過去5年間にサムスン電子は166人、現代重工業は114人の大会入賞者を採用した。

国際技能五輪大会で入賞した高校生の就職率は非常に高い。ここ3年間にメダルを受賞した高校生85人のうち、大学に進学した9人を除く72人全員が就職に成功した。特に昨年の大会で入賞後に就職した19人のうち、16人が大企業に入社した。

韓国企業は、マイスター高校などの職業訓練高校と協定を結び、技術教育の改善や学生の就職支援にも力を入れている。

参考

  • 委託調査員レポート

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