「ブルーカード法」が成立へ
―EU域外の高度技能外国人受け入れ条件を緩和

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2012年6月

連邦参議院は5月11日、連邦議会が4月27日に可決した「ブルーカード法案」に同意し、同法案の成立が確実となった。ブルーカード法案は、EU域外の高度技能外国人材の受け入れ促進を目的としており、2009年に成立したEUの「ブルーカード指令」の国内法整備に該当する。今後所定の手続きを経て、7月1日から施行される見込みである。

EU指令に沿って国内法整備

アメリカの「グリーンカード」を模して「ブルーカード」と呼ばれる在留・労働許可制度は、EU域内の長期的な人口減少に伴って不足が懸念される専門技術者を、EU域外からの積極的な受け入れにより補うことを目的としている。EUでは加盟国の合意により2009年5月25日にブルーカード指令が成立した(注1)。

受け入れ要件を緩和

今回内務省が提出した「ブルーカード法案」には、EU域外の高度技能外国人材の受け入れ条件の緩和や留学生の求職期間の延長などが盛り込まれている。

具体的には、これまでEU域外の高度技能外国人の受け入れ条件となっていた最低年収を6万6,000ユーロから4万4,800ユーロに引き下げ、特に不足が見込まれる科学者、数学者、エンジニア、医師、IT技術者については、さらに3万4,944ユーロまで引き下げるとしている。加えて、ブルーカード(特別在留労働許可証)保持者は、3年間の就業継続後に永住許可証の申請が可能になり、ドイツ語ができる者(欧州語学評価基準B1以上)は2年間で申請が可能となる。そのほか大きな改正点として、大卒資格もしくは5年以上の専門経験を有し、自身の生活費を保証できる者は、ドイツ国内の企業と雇用契約を締結していなくても6カ月の一時滞在が認められ、ドイツに住みながら仕事を探すことができるようになる。また、EU域外の高度技能労働者を雇用する場合に課せられている雇用主への労働市場テスト義務も廃止され、手続きが簡易化される。なお、高度人材としての潜在能力が高い留学生の就業を促進するため、ドイツの大学を卒業してそのままドイツで就職を希望する留学生の求職期間が12カ月から18カ月に延長される予定である。

野党は、賃金ダンピングなど懸念

今回の政府法案に対して、野党からは懸念や批判の声が上がっている。社会民主党(SPD)は、「最低年収の引き下げによって賃金ダンピングが起きるのではないか」という懸念を表明し、「特に3万4,944ユーロまで引き下げられるエンジニアや数学者、科学者などの専門技術者の年収について、彼らの平均初任給は約3万9,200ユーロ(年収)であり、この分野の最低年収を引き下げる必要はない」と主張している。

同盟90/緑の党も、「このような改正だけで外国人技能労働者を誘致するのに十分ではない」という指摘をし、「まず受け皿となるドイツの政治や文化そのものが変わる必要があり、その対策が不十分だ」と批判している。両党とも対案として独自法案を提出したが、連邦議会で否決された。

今回成立したブルーカード法案は今後、大統領の法案署名や各種手続きを経て、早ければ7月1日にも発効する見込みとなっている。

参考資料

  • Deutscher Bundestag Drucksache 17/8682, 17/9436(15.02,25.04,2012), Gesetzentwurf der Bundesregierung Entwurf eines Gesetzes zur Umsetzung der Hochqualifizierten-Richtlinie der Europaischen Union, Deutscher Bundestag(Inneres/Gesetzentwurf-22.02.2012, Deutscher Bundestag dokumente(27.04, 03.04.2012), Deutsche Welle(28.03.2012), European Commission - Press release(27.10.2011), Bundesrat(67 | 201211.05.12), Statistisches Bundesamt(Pressemitteilung Nr. 171 vom 16.05.2012)

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