婚姻率、過去40年で男女とも大幅低下
―主因は男性:所得格差拡大、女性:就業率向上

カテゴリー:勤労者生活・意識

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  • 国別労働トピック:2012年3月

婚姻率は過去40年間、男女とも大幅に低下した―ブルッキング研究所の報告書によると、2010年と1970年を比較した場合、とりわけ、男性の所得中位層と下位4分の1層の婚姻率低下が著しく、所得格差の拡大が影響していると見られる。女性の場合は就業率の上昇が低下に結びついている。

男性:所得中位層など25ポイント以上減

1970年の30から50歳の男性の婚姻率は、所得上位10%層が95%、所得中位層が91%、所得下位4分の1層が86%だった。1970年には上位10%層と4分の1層とで婚姻率に9ポイントの差があったにせよ、おおよそどの所得階層でも婚姻率は高かった。ところが、2010年までの40年間にすべての所属階層で婚姻率が低下している。

その内訳は、上位10%層が12ポイント減、中位層が27ポイント減、4分の1層が26ポイント減である。なかでも中位層と4分の1層の婚姻率低下が著しい。この間に離婚率も上昇したが、同時に一度も結婚したことがない男性の数も上昇した。上位10%層と下位40%層の婚姻率の差は1970年の9ポイントから2010年の23ポイントに大幅に拡大した。

この理由として、報告は世帯所得の低下に注目した。所得中位層の所得がおよそ28%減少するなど、所得格差が拡大したことが婚姻率低下に影響しているとする。

女性:所得向上し選択肢増え、婚姻率低下

女性の婚姻率も男性と同様に低下しているが、その背景には男性と異なる要因がある。

1970年と2010年を比較すると、上位10%層で10ポイント以上、婚姻率が上昇したものの、女性の大半を占める下位70%層は15ポイント以上、婚姻率が低下した。

この間の女性の所得は男性と反対の動きをみせた。つまり、女性の所得は伸びたのである。中位所得でみると、1万9000ドルから3万ドルへと増加した。

この理由は、1970年には44%だった所得のない層が2010年には25%へ減少したことにある。つまり、専業主婦の割合が低下して女性の労働参加率が上昇したのである。これにより、女性の所得が伸びた。これは即ち、女性にとって結婚以外の選択肢が増えることや、仕事上の成功を結婚よりも優先することで婚姻率が下がった可能性があるとしている。

世帯収入が低下、深刻な母子家庭増加

女性の労働参加率が高まることで、女性の所得は伸びたものの、それを上回るペースで男性の所得が低下したことで、夫と妻の所得を合算した世帯年収は低下傾向にある。44%の家庭で世帯年収が低下した。

また、過去40年間に離婚率が高まり、低所得の母子家庭が増加したことも問題を深刻にしている。母子家庭の子供は、両親が共働きをしている家庭の子供と比べて、相対的に貧困な状態におかれるからである。

世帯年収の低下、低所得の母子家庭の増加は、子供への教育投資の低下を招き、貧困が将来の世代に引き継がれる可能性を高めている。

報告では、「婚姻率を上昇に転じさせる特効薬はない」、としながらも、教育と職業訓練に対する投資を高めることで、貧困家庭の子供たちの将来の経済的安定性を確保することを通じて、婚姻率低下に歯止めをかけることが望ましいと結論づけている。

参考

  • Greenston, Michael and Looney, Adam(2012) The Marriage Gap:The Impact of Economic and Technological Change on Marriage Rates, Feb 3,2012, Brookings Institute Website.(2012年2月28日閲覧)
  • What Is Happening to America’s Children? A Look At The Widening Opportunity Gap for Today’s Youth, The Hamilton Project Website(2012年2月28日閲覧)
  • Isen,Adam and Stevenson,Betsey (2010) WOMEN'S EDUCATION AND FAMILY BEHAVIOR: TRENDS IN MARRIAGE, DIVORCE AND FERTILITY, NATIONAL BUREAU OF ECONOMIC RESEARCH

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