労働者の63%、約30日の年休を完全消化

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2012年2月

ドイツ経済研究所(DIW)が昨年12月21日にまとめた社会経済パネル調査(SOEP)の分析結果によると、ドイツのフルタイム労働者の63%が平均約30日付与される年次休暇を完全に消化していた。残り37%も平均9割の日数を消化していた。ただ、若年者、新人、中小企業労働者などに年休を使い切らない傾向が見られた。

63%が完全消化、残りも9割の日数取得

ドイツでは、1979年に鉄鋼産業が締結した労働協約によって労働者の年休を30日に拡大するための礎が築かれた(注1)。それから約30年が経過した現在、労働協約の適用を受けるほぼ全ての労働者に約30日の年休があるのは当たり前になっている。これに加えて年間6~10日(注2)の祝祭日と6週間の病気休暇があるため、国際的に見るとドイツの労働者は恵まれていると言えるだろう。

ドイツの労働慣行では「年休は労働者の権利として全て取得するのが当然」と考えられている。労働者が年休を完全に取得しない場合、上司が管理責任を問われて事業所委員会から警告を受けることもある。こうしたドイツの傾向は、今回の社会経済パネル調査(SOEP)でも証明された。それによると、フルタイム労働者の年休付与日数は約30日で、63%の労働者が年休を完全に消化していた。残り37%の労働者でも平均残日数は3日程度にとどまり、年休消化率は9割に達している。

若年、新人、中小企業労働者で未消化も

表1は、1999年、2004年、2009年の未取得の年休残日数を示している。この表から、若年、企業在籍期間の短い者、中小企業の労働者などの残日数が多いことが分かる。いずれの調査年でも同様の傾向が見られた。

こうした傾向についてDIWのシュニッツライン研究員は、若者や新人は、年配の労働者や長期間の勤務経験を有する労働者と比べてそれほど企業にまだ貢献していないことを理解しており、休暇を取得しないことで、上司に仕事へのモチベーションが特に高いことをアピールしたいためではないかと見ている。また、小規模企業の労働者は企業との一体感が強いために、休暇の取得日数が少なくなると見ている。さらに小規模の企業ほど休暇中の代理を調整するのに困難が生じやすいため、事業の進行に支障を及ぼさないように、労働者が自ら休暇を放棄していることも考えられるとしている。

表1.雇用労働者の年休の残日数(属性別)
  1999年 2004年 2009年
性別
男性 3.4日 3.7日 3.3日
女性 3.4日 3.1日 3.2日
年齢
15~24歳 5.7日 6.1日 5.5日
25~34歳 4.0日 4.2日 4.0日
35~44歳 3.0日 3.0日 2.9日
45~54歳 2.8日 2.9日 2.6日
55歳以上 2.4日 2.5日 2.6日
世帯内の子の有無
いない 3.3日 3.4日 3.2日
いる 3.6日 3.5日 3.4日
企業在籍期間
6カ月以下 11.0日 11.8日 13.4日
6カ月を超え、12カ月以下 9.3日 12.4日 9.8日
1年を超え、2年以下 3.2日 3.3日 2.6日
2年を超え、5年以下 2.0日 2.4日 2.5日
5年を超える 2.0日 2.2日 1.9日
企業規模(従業員数)
20人以下 4.6日 4.5日 4.0日
20人を超え、200人以下 3.7日 3.9日 3.8日
200人を超え、2,000人以下 2.7日 2.3日 2.5日
2,000人を超える 2.3日 2.7日 2.6日

出所資料:SOEPDIW独自計算.

注:1999年、2004年および2009年に対する雇用労働者の回答に基づくデータ。自営業、自由業、 教員、ミニジョブ労働者、不定期労働者は対象としていない。データは年別の推定係数で重み付 けをした。なお、企業在籍期間に関する質問はインタビュー時点について、年休に関する質問は前年について、それぞれ質問されているため、企業在籍期間が1年未満の対象者は、以前の雇用における年休残日数を報告した可能性は否定できない。

年休未取得が及ぼす結果

今回の調査では、年休放棄の動機に関する直接の質問をしていないが、既存データを基に年休の未取得が労働者にどのような影響を及ぼしているかを調査したところ、健康面にはマイナスに働き、所得面には若干プラスに働いていることが明らかになった。年休未取得の者は、年休を完全取得した者と比較して、余暇や健康への主観的満足度が低く、病気による欠勤も多かった。しかし、その一方で、年休未消化の労働者は、そうでない労働者と比べて、翌年の時間給が平均0.39ユーロ高くなっていた。調査対象となった労働者の平均時給は14.1ユーロ(2010年)であることから、0.39ユーロはその賃金の約2.8%に相当することになる。

このことから、シュニッツライン研究員は、年休の未取得が短期的にキャリアや賃金の上昇を伴う可能性があるとしつつも、それによって生活の質が制限され、病気による欠勤が増加するなどの弊害があると警告している。

参考資料

  • DIW Wochenbericht Nr. 51+52.2011(Dezember 21,2011), JILPT Report No.7 (2009) Working Time -In Search of New Research Territories beyond Flexibility Debates-

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