管理職の女性割合、30%へ
―役員レベルは僅少

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  • 国別労働トピック:2012年12月

ドイツ経済研究所(DIW)はこのほど、企業の女性管理職に関する新しいデータを発表した。それによると、2001年に22%だった管理職の女性割合は、2010年に30%へと増加したが、その多くは比較的地位が低い「中間管理職」に留まり、経営に関わる役員レベルの女性は非常に少ないことが分かった。ドイツでは昨年来、企業役員の最低女性比率を義務付けるべきかどうかの議論が続いており、労使でクオータ(割当)制導入の是非や女性管理職登用促進のためのファミリーフレンドリー施策の在り方に関する話し合いが続いている。

大企業の役員は約3%

同研究所は、2001年から社会経済パネル調査(SOEP)を用いて企業の女性管理職に関する分析を行っている。

その分析によると、企業の管理職は男女ともに高学歴で、2010年は女性の64%、男性の66%が大学修了資格を取得していた。男女の相違点としては、男性管理職は、女性管理職より平均で4年以上長い専門的な経験を有しており、労働時間についても、女性管理職の平均週45時間に対し、男性管理職はそれより2時間多い、平均週47時間働いていた。

DIWはこの特徴について、通常、女性より男性の方が1つの会社に留まって長く働く傾向があり、それが専門経験や労働時間の長さにつながっており、昇進とも密接な関係があるとしている。

既述の通り、管理職の女性割合は22%(2001年)から30%(2010年)に増加したものの、その多くは中間管理職に留まっている。これを「ダックス上場企業200社(注1)の取締役会における女性割合」に絞ると、わずか3%にまで下落する(2010年)。

女性の多くは、育児休暇や介護休暇を取り、日常の家事をこなし、家族に対する重大な責任を引き受けており、家庭生活と労働時間のバランスは、女性のキャリアに重大な影響を与える。こうした観点から、2010年における18-34歳の管理職の女性割合が39%だったのに対し、35-54歳層は29%と低かった点について、35-54歳層の女性の方が、より家庭責任に対する圧力がかかっているためではないかとDIWでは分析している。

クオータ制法定化の論議、活発に

近年、企業役員の女性比率を法律で義務付けようとする動きが国内やEUで活発になっている。9月21日には、ハンブルク州とブランデンブルク州が提出した「クオータ制導入法案」が連邦参議院で可決された。同法案では、ダックス上場企業の取締役会・監査役に占める女性割合を2018年から最低20%、2023年から最低40%以上にすることが義務付けられる。

一方、欧州委員会(EU)でも、ビビアン・レディング副委員長(司法・基本権・市民権担当)が中心となり、11月14日にEUクオータ制導入指令案が提出された。それによると、上場企業は2020年までに社外取締役の女性の割合を40%にすることが義務付けられ、比率を達成できない企業には加盟各国が定める制裁が科せられることになる。

しかし、ドイツのクオータ制導入法案は、実施に否定的な連立政権(CDU/FDP)が多数派を占める連邦議会で今後否決される可能性が高い。欧州委員会の指令案も、対象を常勤ではなく「非常勤」の女性役員に限定し、それが難しい場合、各社が自主的に社内役員の割合目標を設定する「自主クオータ制」を代替措置として認めるなど、反対国との調整の結果、当初案よりかなり緩やかな内容となった。

労組は賛成、使用者団体は反発

ドイツ労働総同盟(DGB)は、ドイツ企業の役員に女性が少なすぎるとして、法定クオータ制を導入して多くの女性が役員に登用されるのを支持している。DGBは法定クオータ制の導入はジェンダーの平等を促進するだけでなく、現在の男性中心の働き方―例えばフルタイム中心、長時間労働―を見直す良い機会になると考えている。さらに、法定クオータ制の導入が働き方の変化を引き起こせば、比率を達成できない企業に対する模範的手法の提示や社会的認知・制裁も進むと考えている。

一方、ドイツ使用者団体連盟(BDA)は、法定クオータ制の導入に反対の立場を示している。現在、企業役員に女性が少ないのは、クオータ(割当)の定数の問題というよりもその企業独自の理由があるからだとして、法律による強制ではなく、企業自らが女性管理職の割合を増やすために自主的な戦略と目標を設定する必要があると主張している。さらに、BDAは女性のキャリア開発支援の環境整備のために、特にファミリーフレンドリー施策の導入を強く支持しており、(女性)社員を支援し、ワーク・ライフ・バランスを達成するために、より多くの保育園設置を提案している。

参考資料

  • EIROnline(19 October, 2012), BDA Presse-Information Nr. 014/2012(05. März 2012), Führungskräfte -Monitor 2012-Update 2001 - 2010(DIW Berlin, 2012), Deutsche Welle(21.09.2012, 25.10.2012), Financial Times Deutschland (24.10.2012), Reed Business Information(24 October 2012).

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