知識・技能を兼備した「双師型教師」育成
―天津市で先進的職業訓練―

カテゴリー:人材育成・職業能力開発

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  • 国別労働トピック:2012年10月

就業促進法が施行されて5周年を迎え、天津市の先進的な職業訓練の取り組みが注目されている。同市は、職業学校の教師を企業に長期派遣して研修させて、教育知識と職業技能を兼備する「双師型教師」を育成している。都市開発で支援を受けているシンガポール政府の協力で実施しており、外資系企業と協力して今後もこの動きを広める考えだ。

天津市で就業促進法5周年式典

就業促進法の施行5周年祝賀式典が8月30、31の両日、天津市で開かれた。あいさつした中国就業促進会名誉会長の張氏は「改革開放以来34年が経過したが、その間我々はよりよい雇用環境を模索してきた。その結果として、労働法や就業促進法が制定された。完全雇用を実現するために、今後も就業の発展と改革に取り組まなければならない。」と述べた。

この「就業の発展と改革」において、天津市が先進的な職業訓練を実施して近年注目されている。その最大の特徴は、教育知識と職業能力を兼ね備える「双師型」教師の育成だ。

企業で、教師が技能研修

天津市、とりわけ天津経済技術開発特区(TEDA)では、その特区の自由度を活かして先進的な職業訓練政策を実施している。高等職業教育学校・中等職業学校では、生徒だけではなく(生徒はもちろんのこと)、教師にも企業での研修の機会を設けている。教師は1年間、企業に派遣され訓練を受ける。ひとつの部門に最低1カ月勤務し、各部門をローテーションすることによって、技術水準を向上させる。訓練終了時に実施される試験に合格すれば、知識と技能の兼備する「双師型教師」と認定される。その後も、知識・技能の維持のために、毎年2カ月間の企業での研修が求められる。訓練費用は政府、学校、教師本人が分担する。訓練期間中の身分は学校に置いている。このように教師が社会の最先端のサービス・技術に触れることにより、職業学校での教育の質が担保されている。2010年時点で、「双師型」として認定された教師は高等職業学校で80%以上、中等職業学校で60%以上に上る。さらにこうして経験を積んだ教師を少人数の生徒に割り当てる(表)ことで、きめ細やかな教育を実施している。

表:中等職業学校における、教師1人あたりの生徒数(2010年値、人)
北京 天津 広東 重慶
13.8 8.8 27.2 24.1

出所:中国労働統計年鑑2011より作成

こうした一連の職業訓練政策の背景には、シンガポール政府との協力がある。天津市は2007年に、シンガポール政府から都市開発で支援を受けることに合意したが、その後2009年からは職業訓練分野においても支援を受けることとなり、上記のような先進的な政策を実施している。

また好調な天津の経済状況を受けて、外国からの直接投資も加速している。今年9月にはドイツの大手自動車メーカーが、天津に大規模な製造拠点を開設した。この工場でも地元の職業訓練学校と提携して、職業学校の教師を受け入れて訓練することが予定されている。

参考資料

  • 人的資源社会保障部、人民日報、TEDA人的資源社会保障局、中国労働統計年鑑2011

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