労組、12年交渉で賃上げ強く要求
―「雇用優先」から転換

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2012年1月

統一サービス産業労働組合(べルディ)は、2012年の労働協約交渉で、大幅な賃上げを要求する方針を固めた。ドイツ金属労働組合(IGメタル)も1月から2月にかけての交渉で、賃上げの実現を強く求める予定だ。労働総同盟(DGB)の組合員数の7割を占める両労組のこの動きは他労組にも広がりそうだ。2008年の金融危機以来、労組は「雇用優先」を方針としていたが、新しい年は様変わりの様相を見せつつある。

2012年交渉、幕開け

2008年の世界金融危機の影響で、労働組合はこれまで「雇用確保」を優先にして賃上げ要求を控えてきた。しかし、景気の現状を判断して、今回は賃上げを前面に打ち出す方針だ。2012年は冒頭から、約120万人の連邦・地方自治体の公務労働者や約320万人の金属・電気産業労働者が適用を受ける大型の交渉が続く。この行方は、ドイツポストやドイツテレコム、化学産業、小売業、金融業など他の交渉にも大きな影響を与えるため、今後の展開に注目が集まっている。

欧州危機も阻害要因とはならず

2011年に起きた欧州危機はヨーロッパ全体に暗い影を落としている。しかし、それでもドイツの経済学者は、現時点で労働組合は賃上げに有利な立場にあるとみている。キール世界経済研究所(IfW)のカルステン=パトリック・マイヤー氏は、2012年の労働協約賃金について、「過熱する熟練労働者不足と堅調な労働市場の影響で3%~3.5%の賃上げは可能」と予測している。Ifo 経済研究所のシュテッフェン・ヘンツェル氏も3%程度の賃上げは妥当だとして、「少なくともこの程度の賃上げが原因で、ドイツの競争力が低下することはない」と見る。

ベルディ、公共部門の賃上げに意欲

ベルディのブジルスケ委員長は、ごみ収集労働者や看護師、教員など公共部門の賃上げ獲得に強い意欲を示しており、「公共部門の労働協約による過去10年の賃上げは、金属や化学などの工業部門と比較すると3割以上少ない」と主張する。その上で「この格差は適正に解消する必要があり、必要があれば組合の要求を押し通すために強硬な手段も辞さない」と強気の構えを見せている。

IGメタル、やや慎重な姿勢も

IGメタルも2011年の好況を受けて賃上げを要求する予定だ。バーデン・ヴュルテンベルク州支部長のホーフマン氏は「労働者は多くの企業で好業績が続いていることを知っており、それは春に発表される企業決算でも証明されるだろう」と述べる。さらに「労働者の意欲的な働きがなければこの好景気の実現は不可能であり、その働きに対して相応の賃上げを要求するのは当然である」と言う。ただ、IGメタルは2008年秋に8%の賃上げを要求した直後に金融危機が発生したことが記憶に新しい。これを踏まえて同支部長は「現段階で今後の経済的見通しは安定している。ただし、偏った南欧の緊縮政策が要因で急速な景気減速の可能性があるため、2月末に要求を出す際には、過去の経験も考慮するつもりだ」とやや慎重な姿勢を見せている。

参考資料

  • Ver.di Pressemitteilungen(13.12.2011,09.12.2011), IG Metall Pressemitteilungen(15.12.2011, 19.12.2011), Die Welt(27.11.2011), eiro online(11 May, 2011)

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