「医療介護上級管理士」を新たに公認職業資格へ

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2012年1月

連邦職業教育研究機構(BIBB)は11月24日、新たに「医療介護上級管理士」を公認職業資格として追加することを発表した。医療介護の事業を包括的に管理・指導する資格で、その職務や試験の内容などを定めた法規命令が2012年1月1日に発効した。

背景に医療介護マネジメント人材の不足

教育研究省所管の「連邦職業教育研究機構(BIBB)」と労働社会省所管の「労働市場・職業研究所(IAB)」が2010年に実施した共同調査によると、今後ドイツでは少子高齢化が進み、2025年までに現在よりさらに100万人の医療介護労働者が必要になると予測されている。

しかし医療介護分野では、当該サービスを包括的に管理・指導できる技能労働者が不足しており、適正人材の育成と確保が急務となっている。そこでBIBBは新たに「医療介護上級管理士」という公的職業資格を追加し、技能人材の育成・認定を行うことにした。具体的な職務内容は;

  1. 医療介護に関する包括的事業計画の立案、編成、調整、監督
  2. 初期職業訓練生、継続職業訓練生を含む人材の調達、管理、育成指導
  3. 施設内外の適切な関係構築と、コミュニケーション管理
  4. 重要管理データの調査と評価、および適切な管理手法の導入と提供サービスの把握
  5. 事業目標および事業戦略の策定と実施
  6. 財政・投資計画、資金調達計画等の策定と実施
  7. 品質マネジメントプロセスの管理と最適化
  8. 個別計画の立案、編成、調整、監督、評価
  9. マーケティングの計画立案と実施

となっており、施設運営や人材管理・育成などの複雑な専門業務をこなす能力が要請されている。そのため主な対象者は、すでに医療介護分野の職業経験を有する者で、例えば公的医療機関や高齢者介護施設の看護士や介護士などが想定されている。2012年1月から始まる公認資格試験に合格した者は医療介護分野の様々な機関・施設で雇用者として働くか、もしくは独立事業主として働くことができる。

公認職業資格の詳細は政労使で策定

「医療介護上級管理士」は、ドイツの職業訓練制度の二本柱である「初期職業教育訓練」と「継続職業教育訓練」のうち、後者の継続職業教育訓練に該当する。継続職業教育訓練は、主に社会人を対象としたもので、新しい業務に対応するために必要な技能を身につける適応継続訓練や、上級の公的資格を得ることを目的とした職業向上訓練などがある。一方の初期職業教育訓練は、主に義務教育を修了した若者を対象としたもので、職業学校に通いながら企業で訓練を受けるデュアルシステム(二元的教育訓練制度)や、全日制職業学校でフルタイムの訓練がそれに該当する。

今回、「医療介護上級管理士」を公認職業資格として追加することを発表したBIBBは、連邦教育研究省(BMBF)の管轄下にある公的組織で、BMBFが策定した職業教育全体の基本的制度設計や方針に基づき、具体的な職業教育訓練の企画立案、関連規定の整備などを行っている。BIBBはまた、今回のように新たな公認訓練職種の創設や廃止、訓練内容の改訂の際にも調整役となって、連邦政府、州政府、労使代表、専門家など関係者とともに法規命令(Verordnung)の策定を主導している。「医療介護上級管理士」に関する法規命令を策定した際には、BIBBが2009年に行った「医療・介護福祉分野における管理職職員の訓練の必要性と資格の要請調査」が基礎資料となった。

なお、法規命令に沿って訓練が正しく実施されているかを監督するのは、商工会議所をはじめとする各会議所である。

参考資料

  • BIBB Press release, 49/ 2011, Bonn, 24.11.2011, Bundesgesetzblatt Jahrgang 2011 Teil I Nr. 42, ausgegeben zu Bonn am 4 . August 2011, www.qube-projekt.de“Occupations and qualification in the future -BIBB-IAB model calculations in occupational fields and qualifications until 2025”

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