緊急失業保険給付プログラム延長と給付要件厳格化の議論

カテゴリー:労働条件・就業環境

アメリカの記事一覧

  • 国別労働トピック:2012年1月

12月13日、連邦下院議会は緊急失業保険給付プログラムの一年間延長に関する法案を賛成多数で可決した。その後、上院に送られたたものの、議論がまとまらず、法律の期限切れとなる12月31日の前に2カ月間の暫定的な延長法案が可決される見込みである。
下院で可決された法案は、法案延長とあわせて給付要件の厳格化が付帯されており、民主党およびAFL-CIO(アメリカ労働総同盟産業別組合会議)が反発している。

給付要件の厳格化

12月31日に期限切れとなる現行の法律は59週間までの失業期間を対象にしている。これを40週まで削減することに加えて、次の5つが給付要件に課されることが法案に織り込まれた。

  • 失業保険受給者に薬物乱用に関するテストを実施すること。なお、このテストは1960年代にとりやめられたものである。
  • すべての失業保険受給者に求職活動もしくは高校を卒業していない場合は高校卒業資格試験プログラムの受講、および再雇用サービスへの参加を義務付けること。
  • ムダ、不正、濫用を厳しく取り締まるためのデータ標準化といった統合的な手法を実施すること。
  • 各州独自の再雇用プログラムを設計する柔軟性を与えること
  • 高額所得者の失業保険受給を禁じること

この法案に対し、AFL-CIOは年収100万ドル以上の富裕層にわずかな増税をすることだけで、給付期間の短縮や給付要件の厳格化の必要がなくなるとする。それだけでなく、公務員給与カットも必要がなくなり、中低所得層の医療保険掛金の助成と予防的医療サービスのカット、高齢者向け医療保険金掛金の上昇を防ぐことなどができると主張している。

2010年になんらかの失業期間を経験した人は2520万人

給付期間の削減と給付要件の厳格化の方向に議論が向かう中で、2010年になんらかの失業期間を経験した人は2520万人だったとする調査結果を米国労働省労働統計局が12月8日に発表した。

この数は労働力人口のおよそ15.9%にのぼる人がなんらかの失業状態にあったことを意味する。男女別では男性の17.7%、女性の13.8%であり、2回以上の失業期間があった人の数は390万人にのぼった。

米国労働省労働統計局は1985年から同調査結果を発表しているが、09年の2610万人ともっとも悪い数字だった。

09年よりも深刻化する傾向

なんらかの失業期間を経験したことがある人の数は09年から改善の兆しが見えているものの、休職期間、および雇用形態に深刻化の傾向がみえる。

09年は平均で19.7週の求職期間が2010年で19.9週とほとんど改善しておらず、求職しているにもかかわらず仕事が見つからない人の数は、09年の71万5000人から10年では660万人に急増した。

また、フルタイム雇用を探しているにもかかわらず、パートタイム労働を選ばざるをえない人の数も増加傾向にある。

このような状況のなかで、長期失業者に対する効果的な施策が求められていると同時に、富裕層に対する増税が議論の遡上にのっていると言えよう。

参考

  • 25.2 Million Workers Were Unemployed At Some Point in 2010, BLS Date Show, Dec.8, Daily Labor Report
  • House Approves One-Year Extension Of UI Benefits, but Cuts Off 40 Weeks, Nov.13, Daily Labor Report
  • Senate, House Expected to OK Tax Break,Two-Month UI Extension ‘Before Christmas' Nov.22 Daily Labor Report

参考レート

関連情報