早期退職の傾向裏付ける
―調査統計局が年金生活移行過程を調査

カテゴリー:勤労者生活・意識

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  • 国別労働トピック:2011年7月

フランス調査統計局(DARES)は5月、引退労働者の動向に関する報告書「年金生活移行過程調査(2006)」を発表した。フランス労働者の職業生活から年金生活へのプロセスを知る上で興味深いデータを提供している。これによると、55歳から59歳で労働市場から引退した者のうち約半数が、現役引退後1年以上経ってから年金の受給を開始していた。これは、公的年金の受給資格を得る前に引退した者が多かったことを意味する。フランス労働者の早期退職傾向を裏付ける結果となった。

現役引退者の半数以上が1年後に年金受給開始

「年金生活移行過程調査(2006)」(注1)によると、2006年に50歳から69歳であった者の就業率は平均45.8%であった。就業率は50歳で80%、59歳で42%、62歳になると14%と大きく低下する。57歳から60歳では各年齢区分の8%から13%が早期退職者か求職活動を免除されている失業者である。60歳以降人口に占める年金生活者の割合は大幅に増え、61歳の者で60%、65歳以上では80%が年金生活者となっている。

職業生活の末期は、そのまま年金生活に移行するケースと、移行期間を経るケースにはっきりと分かれ、移行期間は長くなることもある。60歳になる前に労働市場を引退する者は一般に直ちに年金を受給できる条件を満たしていない。その結果、55歳から59歳で最後の仕事を辞めた者の場合、退職から年金を受給するまでの期間が1年を超えたと答えた者は52%にのぼった。一方、60歳以上で労働市場を引退した者は一般に仕事を辞めてそのまま年金生活に移行している。60歳から69歳に仕事を辞めた者の約81%が、退職直後3箇月以内に退職年金を受給していた(図1)。

図1 退職後の年金受給までの期間

図

範囲:2006年12月31日現在70歳未満の一般世帯の非就業者、フランス本土

出所:Insee 2006年労働力調査および2006年労働力付帯調査に基づきDaresが作成

退職年齢は職種により異なる

退職年齢は職業カテゴリーにより大きく異なる(表1)。例えば管理職、農業従事者または手工業従事者は、早期退職傾向が弱い。55歳から59歳に最後の仕事を辞めたと答えた者の21%にすぎなかったが、65歳から69歳で最後の仕事を辞めたと答えた者は40%であった。一方、早期退職者には、中間職とブルーカラー労働者が比較的多い。50歳から54歳に労働市場を引退した者の42%が、その理由として失職を挙げ4分の1が健康問題や障害の問題のためだと答えている。55歳から59歳で労働市場を引退した者では、この割合はそれぞれ21%と15%である。そしてこの年齢区分の労働市場引退者の27%が有利な退職条件の享受(特に早期退職)を理由に挙げていた。60歳以降の労働市場からの引退の4分の3以上で、退職年金の受給が理由であった。

表1 退職時の職業カテゴリーと年齢 (単位:%)
最後の仕事を辞めた時の年齢 農業
従事者
手工業
従事者
管理職・ 高度知的
労働者
中間
管理職
ホワイトカラー労働者 ブルーカラー労働者 合計
50歳から54歳 2 6 10 22 31 30 100
55歳から59歳 2 5 14 26 25 27 100
60歳から64歳 7 11 18 17 25 23 100
65歳から69歳 5 11 24 14 28 18 100

出所:Insee 2006年労働力調査および2006年労働力付帯調査に基づきDaresが作成

50代前半就業者の6割が早期退職を希望

就業中の50歳から54歳の66.2%が60歳になる前に退職を考えていると回答している。他の条件がすべて同じ場合、健康問題のある者はそうでない者よりも60歳前に職業活動を止めようと考えている割合が高く、このような早期退職を考える傾向は、ブルーカラー労働者でより強く見られる。また、民間セクターの被用者の方が公共セクターの被用者よりも60歳前の退職を予定している者の割合が高く、一方60歳前に労働市場を引退するつもりの独立自営業者はこれよりも少ない。

さらに男女比でみると、60歳前に労働市場を引退しようと考えている者の割合は女性の方が男性より低い。女性は男性よりも職業生活の中断を経験していることが多く、年金受給の権利の加算を継続し、年金受給の先延ばしを希望しているケースが多かった。同様に、失業期間を経験している者では、60歳前に労働市場を引退しようと考える者は比較的少ないようだ。

表2 職種・年齢・身分別早期退職傾向(単位:%)
  早期退職を
考えていない者
早期退職を
考えている者
性別  
男性 50.2 58.9
女性 49.8 41.1
社会職業カテゴリー  
商業者・手工業者 7.9 6.9
管理職・高度知的職業 20.7 7.2
中間職 20.4 23.6
ホワイトカラー労働者 29.2 27.6
ブルーカラー労働者 17.8 32.6
年齢  
50歳から54歳 52.9 66.2
55歳から59歳 47.1 33.8
身分  
独立自営 11.3 5.2
民間 63.6 68.7
公共 25.1 26.1
失業期間があった 37.3 28.7
健康問題のために
制限されている
11.6 16.5
過去5年間に仕事を変えた 19.9 19.3

出所:Insee 2006年労働力調査および2006年労働力付帯調査に基づきDaresが作成

早期退職の理由

早期退職の動機はどういうものだろうか。50歳から59歳の年齢層において職業活動の継続を誘発する理由として全般的に高かったのは時間がフレキシブルに使えるからという理由だった(表3)。他方、より多くの訓練が受けられるようになること、労働条件がよくなることといった理由は、それほど高くない。また、65歳以降に労働市場を引退する予定の者では、同様の理由でより長く働くことの誘因になり得ると答えている割合が、60歳前の退職を考えている者よりも高かった。一方、60歳を越えても仕事を続けている労働力人口の60%が経済的理由から仕事を続けていると答えている。満額の退職年金を受給できるが働き続けている者で、経済的理由から60歳以降も働き続けるという選択をしている者は45%だけであった。

表3 予定引退年齢と職業活動継続の誘因に関する意見(単位:%)
予定引退年齢 特に時間がよりフレキシブルになることや、労働時間が短くなることは、より長期間働き続ける誘因になり得るか? 
はい いいえ
50歳から59歳 13 87
60歳 16 84
51歳から64歳 20 80
65歳以上 27 73
できるだけ遅く 17 83
合計 15 85
予定引退年齢 新しい能力の訓練を受けることや、既得の知識を深めることで、より長期間働き続けることが可能になるか、あるいはそうしたいという気になるか?
はい いいえ
50歳から59歳 9 91
60歳 11 89
51歳から64歳 16 84
65歳以上 21 79
できるだけ遅く 19 81
合計 13 87
予定引退年齢 安全・衛生条件の改善は、より長期間働き続ける誘因になるか?
はい いいえ
50歳から59歳 5 95
60歳 6 94
51歳から64歳 6 94
65歳以上 7 93
できるだけ遅く 8 92
合計 6 94

範囲:一般世帯の2006年12月31日現在50歳から59歳の就業者。フランス本国。

出所:Insee 2006年労働力調査および2006年労働力付帯調査に基づきDaresが作成

予想されたとおり、フランス労働者の早期退職願望は全般的に強い。だが、フランスは昨秋、厳しい財政赤字問題を背景に公的年金の支給開始年齢の引き上げを決めた。現行60歳の年金支給開始年齢が2018年までに段階的に62歳へ引き上げられ、現行65歳の年金満額支給年齢が2023年までに段階的に67歳へ引き上げられる。職業生活と年金生活との間の経済的ギャップはより拡大するリスクがある。

参考

  • Dares Analyses (Daresアナリーズ)N° 035 (2011年5月)、海外委託調査員

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