「スマートワーク」ガイドラインを発表
―政府

カテゴリー:多様な働き方

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  • 国別労働トピック:2011年6月

雇用労働部は4月12日、「スマートワーク拡大のためのガイドライン」を発表した。スマートワーク(smart work)とは、「労働者が勤労時間の全部または一部を、自宅もしくは使用者が提供する別の事務室、または特定されない場所で、情報通信機器を利用するなどの方法で勤務する働き方」をいう。つまり、場所と時間に縛られない働き方を指し、日本では通常テレワーク(Telework)として知られる(注1)。今回のガイドラインは労務管理上の実施要領を提示した。スマートワークの実施にあたっては労務管理の難しさにより積極的な導入を躊躇しているケースが見られ、こうした現状を打開する目的がある。

これまで政府は戦略的にスマートワークの導入を進めてきた。昨年7月に「スマートワーク活性化推進計画」を発表した後、今年一月には「スマートオフィス計画」が発表されるなど、迅速な取り組みを行っている。「スマートオフィス計画」によると、2015年まで公務員の20%、全体労働人口の30%がスマートオフィスを導入する予定である。

政府がスマートワーク導入に積極的な理由は何か。韓国はOECD加盟国の中で年間総労働時間が最も長いが、生産性は低いとされる。政府は現在の体制ではこれ以上生産性が上がらないと判断、対案としての労働形態の一つが柔軟な働き方であるスマートワークと位置付ける。スマートワークは、(1)出退勤時の移動エネルギーの削減を通じて温暖化ガスを削減、(2)少子高齢化社会に適した多様な働き方を提供、(3)生活の質を高めるという効果を持つ。また、情報通信分野の国際競争力を高めたいとする思惑も読み取れる。

こうした政府の強い推進戦略に応え、大企業を中心にスマートワークが導入され始めている。例えば、韓国の通信大手のKT(Korea Telecom)は昨年9月から職員2万人が利用できるスマートワークシステムを構築した。併せてすべての職員にアイパッド(iPad)を支給、これによるスマートワークを進める計画を発表した。また、大手サムソン電子は、ソウル市中心部とソウル市近辺にあるベッドタウン・盆唐(ブンダン)の2カ所に企業独自の「スマートワークセンター」を開設した。サムソン電子によると、今年は小学生以下の子供を持つ30名の職員に対し、テスト運用を行って、来年度からは本格的なスマートワークを導入する計画であるという。このように、最近韓国において大企業を中心にスマートワークを導入する動きが広がっている。

韓国のスマートワーク政策において特徴的なのは、積極的な「スマートワークセンターの創設」である。スマートワークは在宅勤務・モバイルワーク・スマートワークセンターにより成り立つ。スマートワークセンターは主に都市の郊外にあるベッドタウンに設立されている。現在、政府はソウル市内と郊外の3カ所にスマートワークセンターを開設し、運営している。スマートワークセンターは監視カメラや人体認識システムを導入した入館システム・映像会議・休憩空間などを設けた事務スペースのほか、保育施設・食堂・屋上庭園といった設備を設けている。スマートワークセンターは、2013年までに22カ所、2015年までに50カ所を構築する予定だ。また、オランダのスマートワークセンターネットワークとの連携をもとに、国際的なシステム構築も視野に入れている。

韓国での取り組みはまだスタートしたばかりで、中央政府と一部の大企業が参加しているのが現状。今後拡大のためには、システム構築の資金問題、セキュリティ問題、労務管理問題、企業文化など乗り越えなければならない課題が存在する。しかし、政府の積極的な政策推進、高層マンションを中心とする大規模な居住エアリアの存在、IT産業を中心とした新しいビジネス事業の展開、厳しい育児事情などがあり、スマートワークは急激に拡大する可能性がある。今後のスマートワークの動向が注目される。

参考

  • 韓国雇用労働部Web、韓国行政安全部Webなど各中央政府Web
  • 韓国行政安全部「スマートワークセンター推進活性化計画」2011年1月20日
  • 韓国雇用労働部「スマートワーク拡大のためのガイドライン」2011年4月12日
  • 韓国経済新聞 2011年5月13日版など各種新聞

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