従業員への利益還元、増配企業に義務化

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2011年5月

サルコジ大統領は4月7日、株主への配当を増額した企業に対し、給与増額を義務付ける方針を明らかにした。増益増配しているにもかかわらず賃上げ率が抑制されている企業従業員の不満解消を目的に、一定程度のボーナス支給を義務付けるという内容。しかし経済界などからの強い反発もあり、今後の法整備に関しては紆余曲折も予想される。

大統領府が採択したのは「配当を増額した従業員50人以上の企業に利益分配手当を支払うことを義務付ける」という案。金額については少なくとも1000ユーロのボーナスを支給する案を示している。経済危機を経て経済が回復基調に乗る中、支払い配当を増額する企業が大企業を中心に増え始めている。サルコジ大統領は、「価値の分配に固執するのは、これが正義にかかわる問題だからだ。経済が回復すれば、経済危機の間忍耐を強いられた労働者が回復の恩恵を享受するのは当然のこと」と述べ、政策の正当性を印象付けるとともに制度導入反対派には譲歩しない構えを見せた。適用企業の従業員数の下限が50人に設定されたことは、大統領側がむしろ「厳しい」ラインを引いたものと受け止められている。

フランソワ・バロワン予算相は「より良い配分を目指す交渉を促すようなシンプルな制度を設けたい」と制度導入の趣旨を説明した。導入が決定すればこの利益分配手当は永続的制度になる模様である。配当の基準期間はこれからの交渉となる。企業は過去2年もしくは過去3年の平均額を比較することが求められる。従業員50人未満の企業では、利益分配手当を支給するか否かは使用者の裁量に委ねられる。ただし、配当が支払われる場合、従業員への手当支給が強制的かつ機械的に行われるのかという点については、まだ合意はなされていない。実施の詳細は未定だ。

しかし、当然ながら経済界などからは強い反発の声があがっている。これに対してクリスティーヌ・ラガルド経済相は「金額の上限下限は設定しない」と、目指すところは企業と労働組合の間での対話であることを強調、併せて利益分配手当支払いに対する税および社会保障負担の優遇措置もあり得ることを示唆した。また同案には、従業員への利益の還元策に関する労使交渉を義務付ける考えも含まれている。しかし経済界は、各企業で労使交渉の余地があることは評価する一方で、従業人50人というラインについては抵抗の構えも見せている。また、一方の労働組合からも一部の被用者しか対象にならないのではとの非難も出ている。

この案は、夏までに国会に提出される予定であるが、サルコジ大統領が自身の支持率上昇を狙ったものとの見方もあり、今後の法整備に関してはなお紆余曲折が予想されている。

資料

  • 海外委託調査員、Les Echos紙

参考レート

  • 1ユーロ(EUR)=115.57円(※みずほ銀行リンク先を新しいウィンドウでひらくホームページ2011年5月30日現在)

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