求職者基礎保障給付、2012年から3ユーロ積み増しで決着

カテゴリー:雇用・失業問題勤労者生活・意識

ドイツの記事一覧

  • 国別労働トピック:2011年3月

連邦参議院と連邦議会は2月25日、ハルツ第4法の改正案(長期失業者とその子どもに対する給付の見直しに関する法律案)を採択した。これにより、ハルツ第4法に基づく求職者基礎保障の標準月額は2011年1月1日に遡って、同日付で5ユーロ引き上げ、364ユーロとなる。2012年1月1日からはさらに3ユーロ引き上げ、367ユーロになる。このほか2012年1月1日には、賃金・物価変動に基づく給付額の調整を実施する。

主な合意内容

改正案は、昨年9月の連立政権内の合意を経て、当初は月額5ユーロの引き上げを予定していたが、野党側が「引き上げ額が少なすぎる」として強く反発し、両院調整委員会で2カ月以上にわたり与野党の調整が続いていた。その結果、最終的には2012年からさらに3ユーロを引き上げ、現行より8ユーロ引き上げた367ユーロとする妥協案で落ち着いた。主な合意内容は以下の通り:

  • 標準月額:標準月額は、2011年1月1日に遡ってこれまでの359ユーロに5ユーロを上乗せした364ユーロを支給する。2012年1月1日から毎年の賃金・物価変動に基づく調整のほか、さらに3ユーロ引き上げる。なお、子どもの算定基準に関する昨年3月の違憲判決を受けて、受給者の子ども(未成年)の月額は据え置き、代わりにスポーツや音楽などの余暇活動に10ユーロ、遠足・課外活動に年額30ユーロ、そのほか必要に応じて補習塾や通学の定期券を新たに支給する。また、これまで支給していた学用品などのための年額100ユーロは現状で据え置く。
  • 財政負担:連邦政府は2011年から2013年まで、(受給者の)子どもの保育所の給食費と学校のソーシャルワーク費のために毎年4億ユーロを地方自治体に提供する。このほか高齢者と障害者に対する基礎保障給付は三段階に分けて実施し、費用は連邦政府が恒久的に負担する。
    最終的に地方自治体の負担は2012年から2015年だけで約122億4000万ユーロ軽減される見込み。
  • 最低賃金規定: 労働者派遣法(AÜG)の中に最低賃金に関する条文を加える。さらに、警備保障業(現金有価物輸送業を含む)と継続訓練業は、労働者送り出し法(AEntG)に基づき最低賃金を定めることが可能。

連邦議会と連邦参議院のねじれ

今回改正案の審議が長引いた背景には、連邦議会では連立与党が多数を占める一方、連邦参議院では野党が1票差で過半数を占めているという日本と同様のねじれ状態が関係している。
 通常法案の場合は、連邦参議院が反対しても連邦議会が再度可決すれば法律として成立する。しかし、今回のハルツ第4法改正案のように、州や市町村の利害に関する内容を含む場合は、州の代表者で構成する連邦参議院の同意がなければ法案は成立しない(同意法案、図1参照)。今年は州知事・議会選が今後7つ控えている地方選挙年ということもあり、与野党ともになかなか譲歩せず、2月11日の段階では交渉が決裂して合意の目途が立たない危機的な状況だった。しかし、最終的には双方が歩み寄りを見せ、10時間にわたる長時間の交渉の末、21日の午前3時に与野党合意に至った。

図1.連邦議会の法案審議過程

図1

出所:JILPT資料シリーズNo.67「政労使三者構成の政策検討に係る制度・慣行に関する調査 」(ドイツ部分P.30)

連邦労働社会相の談話

今回のハルツ第4法の改正案の成立に関してフォン・デア・ライエン連邦労働社会相は「長い交渉の末、合意に至ることができて良かった。また、結果として子どもたちと地方自治体が主な勝者となったことを嬉しく思う」と述べた上で、「給付額は、財政状況や裁量によって恣意的に決定したわけではなく、公正かつ正確に計算された上で決定したものであり、すべての基礎保障受給者は、最低限の生活給付を受け取ることができる。これに関する政府の基本理念は“ハルツ第4法に該当する長期失業者とその子どもらを一刻も早くそこから連れ出し、政府の負担を軽減すること”である」との談話を発表した。

参考資料

  • 連邦議会および連邦参議院プレスリリース(2月25日付)、連邦労働社会省プレスリリース(2月21日付、25日付)、Deutsche Welle(2月21日付)、海外委託調査員報告

参考レート

  • 1ユーロ(EUR)=114.90円(※みずほ銀行リンク先を新しいウィンドウでひらくホームページ2011年3月8日現在)

2011年3月 ドイツの記事一覧

関連情報