特に先進国で雇用回復に遅れ
―ILO世界の雇用情勢2011報告

カテゴリー:雇用・失業問題統計

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  • 国別労働トピック:2011年2月

国際労働機関(ILO)は1月25日、「世界の雇用情勢2011-雇用回復の課題」と題する報告書を発表した。それによると、2010年の世界全体の失業率は6.2%と前年比で0.1ポイント改善し、3年ぶりに緩やかながら回復した。ただ先進国をみると、2010年も前年比で0.4ポイント悪化しており、3年連続で失業率が上昇するなど回復の遅れが目立つ。

ILOは「2011年は世界全体で緩やかに雇用が回復する」と予測しているが、2010年の世界の失業者数は2億500万人と3年連続で2億人を超えて高止まりしている上、全体の約2割にあたる6億3000万人の労働者は1日当たり1.25ドル未満で暮らす貧困世帯に属している。こうした貧困層の労働者は危機前より約4000万人増加しており、課題は山積している。

経済危機をはさんだ失業率の推移をもう少し詳しく見ると、中国を含む東アジア諸国では2009年から2010年にかけて失業率が4.4%から4.1%に低下するなどの雇用改善が進んだが、EU・先進国地域では同時期に8.4%から8.8%に悪化している。先進国の2010年の失業者数は4480万人で、危機前の2007年から1570万人も増加した。これは危機後の世界の失業者の増加分(2760万人)の半分強(55%)に当たり、経済危機でより深刻な打撃を受けた先進国が、世界の雇用回復の重荷となっている。

図1.経済危機前後の平均失業率の推移(2007年~2011年)

図1

出所:ILO, Trends econometric models, 2010年10月

また、年齢別では若年層(15~24歳)の失業率の高さが目立つ。2010年の若年失業率は25歳以上層の2.6倍に当たる12.6%に達しており、 ILOでは「若年層の雇用回復は世界的な優先課題だ」として、若年対策の強化を求めている

ILOはさらに「現在の先進国で見られる財政赤字削減に焦点を合わせて雇用対策を縮減する動きは2011年の雇用展望をさらに悪化させる危険性がある」と警告しており、労働市場の改善はマクロ経済の回復に貢献するとして、加盟各国に雇用対策の継続と強化を求めている。

参考資料

参考レート

  • 1米ドル(USD)=82.00円(※みずほ銀行リンク先を新しいウィンドウでひらくホームページ2011年1月27日現在)

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