沿岸部・東部を中心に引き上げ
―11年の最低賃金

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2011年12月

2011年は現在までのところ20以上の地区で最低賃金が引き上げられた。経済発展のスピードを反映して、引き上げられた地区は沿岸部・東部が中心である。また来年1月にも広東省での引き上げが予定されている。

最高は深センの1320元

本年に最低賃金が引き上げられた地区は20地区を超える(図1)。平均引き上げ幅は21.7%。最高額(月額)は広東省深セン市の1320元で、次いで浙江省杭州市の1310元、広東省広州市の1300元となっている。これら沿岸部地域は近年の急激な経済成長に伴う労働者不足を受けて、ここ5年ほどで最賃額は2倍近くに達している(図2)。

なお、最低賃金の水準に、社会保険料と住宅積立金を含めるか否かは、地区によって異なる。例えば、上海市や北京市では含まない。現在の上海市の最低賃金は1280元だが、労働者が納付すべき最低の社会保険料235.4元、住宅積立金78元を別途、雇い主が負担しなければならず、これらを加えると1593.4元となり、実質的に全国最高水準となる。

図1:2011年に最低賃金を引き上げた地区(赤色)

図1:2011年に最低賃金を引き上げた地区(赤色)出所:人的資源社会保障部

出所:人的資源社会保障部

図2:各地の最低賃金の推移(元/月)

図2:各地の最低賃金の推移(元/月)(2005-2011年)出所:人的資源社会保障部

出所:人的資源社会保障部

西部地区の賃金は相対的に低調

本年における西部地区の最低賃金引き上げは、新疆ウイグル自治区のみであった。西部地区の最低賃金は水準としても低い傾向にあり、沿岸部との格差が鮮明となっている。この状況について、人的資源社会保障部労働工資研究所の蘇海南所長は「最低賃金水準は、各地の経済状況・最低生活費用等を反映して決定される。発展著しい地区は生活水準が高く、経済的な競争力がある。さらに他の地区に先んじて産業構造の調整が行われており、中・高技能労働者の割合も高い。そのため最低賃金の引き上げは、当該地区においては必ずしも企業の多大な負担とはならず、結果としてローエンドの産業・労働集約型の産業の中西部への移転を推進している。経済的に立ち遅れている中西部では、労働集約型の産業が中心であり、企業の負担能力は脆弱である。平均賃金に対する最低賃金の割合は東部に比べて高い状態だ。急激な人件費の上昇は雇用に悪影響を与える恐れがあり、最低賃金の上昇は緩やかに実施されるべきだ。」と述べている。

広州市では来年より1500元超えの見通し

ここ5年ほどで急上昇した中国各地の最低賃金は、来年以降も上昇する見通しだ。中国国内で最高水準である広東省の地元政府は、来年1月より実施予定の最低賃金引き上げについて、2種類の案を提示している(表)。両案とも15%以上の上昇を予定しており、広州市では1500元を超えるのはほぼ確実な状況である。

表:広東省各地における最低賃金引き上げ案(2012年1月より 元/月)
地域 現行 第一案 第ニ案
広州 1,300 1,500 1,520
珠海・中山 1,100 1,270 1,290
恵州 950 1,100 1,120
梅州 850 1,000 1,020

出所:東莞市外商投資企業協会

参考資料

  • 海外委託調査員
  • 人的資源社会保障部 統計局 各市省政府 新華社通信 天津網 東莞市外商投資企業協会

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