最低賃金額、10月より6.08ポンドに

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  • 国別労働トピック:2011年10月

最低賃金額が10月1日に改定された。21歳以上向けの基本額が6.08ポンド(15ペンス・2.5%増)、18-20歳向け額が4.98ポンド(6ペンス・1.2%増)、16-17歳向け額が3.68ポンド(4ペンス・1.1%増)となったほか、昨年新たに導入されたアプレンティス(見習い訓練生)向けの額が2.60ポンド(10ペンス、4%増)に引き上げられた。基本額は賃金上昇率に準じて改定する一方、雇用状況を勘案のうえ若者向けの最賃額の改定幅は低く抑えた形だ。最賃制度に関する政府の諮問機関である低賃金委員会は、今回の改定により影響を受ける労働者を89万3000人と推計している。

制度の悪用も懸念

ただし、最賃の支払いを回避する悪質な雇用主がみられることに委員会は懸念を示している。こうした雇用主が用いる手法の一つが、本来最賃が適用されるべき仕事に若者をインターンとして受け入れ、無給で就労させるというものだ。就業体験やボランティア、あるいは高等教育の一環としてインターンを受け入れる場合などは、最賃の適用が制度上除外されるが、一部の雇用主は、こうした名目で受け入れた若者を実質的に働かせることで、賃金の支払いを回避しているという。特に近年は、大卒者の雇用状況が悪化していることに加え、就業経験の有無が採用を左右し得ることから、企業がインターン制度を悪用しやすい状況にあるといえる。労務管理の専門団体XpertHRの調査によれば、インターン等を受け入れている雇用主のうち賃金を支払っていない雇用主の割合は44%にのぼる一方、就業体験を装った無給インターンは不正であるとする雇用主は45%にとどまる。また、賃金を支払っている場合にも金額はまちまちで、中にはアプレンティス向けの最賃額を支払っている雇用主もいるなど、最賃制度に関する双方の知識不足も一因となっているとみられる。

こうしたことから、低賃金委員会をはじめシンクタンク(注1)や労働組合などは、インターンに対する最賃適用の必要性を主張、政府はこれをうけて、既存の最賃制度ガイダンスにインターンへの適用に関する項目を盛り込んだ。最賃を適用すべき条件をチェックリスト化し、雇用主とインターンの間の報酬(必要経費を除く、金銭または実物支給による)支払いを伴う契約等の有無や、個人として労働を提供する義務などの有無により判断する仕組みだ。

また、自営業者に対して最低賃金が適用されないことを悪用するケースもみられる。理容業の業界団体であるNational Hairdressers Federationが低賃金委員会に報告したところによれば、過去1年で1万人の理容師が被用者から自営業者に変更されている。

さらに、介護業では労働時間の範囲を限定して移動時間を除外したり、訪問介護の件数や所要時間に応じた歩合制の採用などにより実質的に時間当たり賃金が最賃額を下回るケースも多いという。介護労働者の問題を研究するロンドン大学キングス・カレッジのフセイン博士は、イングランドの介護労働者のうち最賃の基本額が適用される21歳以上の介護労働者11万人(9%)が最賃未満の賃金水準にあると推計している(注2)。イギリス全体に換算すると15~20万人にのぼり、政府統計の推定する2万7000人(16歳以上)の約5倍に相当する。

参考資料

参考レート

  • 1英ポンド(GBP)=118.37円(※みずほ銀行リンク先を新しいウィンドウでひらくホームページ2011年10月5日現在)

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