経済危機で世界の賃金上昇率が半減
―ILO世界賃金報告2010/2011

カテゴリー:統計

ILOの記事一覧

  • 国別労働トピック:2011年1月

国際労働機関(ILO)は12月15日、「世界賃金報告2010/2011-危機時の賃金政策」と題する報告書を発表した。それによると、経済危機の影響で、2007年に2.8%だった世界の平均賃金月額の伸びは、2008年に1.5%、2009年に1.6%へと半減したことが明らかになった。調査は115カ国・地域を対象に行われ、報告書は当該賃金労働者の94%にあたる約14億人のデータを網羅的に分析している。

報告によると、賃金の伸び率は、国や地域によって差があり、アジア諸国(中央アジアを除く)や中南米では、賃金上昇率は鈍化しながらもプラスだったが、中央アジアや東欧では急落し、マイナスとなった国がほとんどだった。
なお2008年、2009年ともに賃金の伸びが2桁を記録し、経済危機後も上昇が著しかった中国を除くと、世界の賃金の平均上昇率は2008年に0.8%、2009年に0.7%にまで落ち込む。

日本については、2007年から2009年の賃金上昇率について、2008年、2009年ともにマイナス2.0%近く実質賃金が下落しており、賃金と物価のデフレ問題を抱えていると分析している(図1)。

図1.2007年~2009年の賃金上昇率-先進4カ国比較(%)

図1

注:  実質平均月給額の前年比上昇率

出所: ILO Global Wage Database

ILOは、「今回の経済危機では最も弱い立場にある労働者の購買力を保護するために、約半数の国が最低賃金の調整を行ったが、これは経済危機時に最低賃金を凍結するという従来の対応とは異なる」と指摘している。その上で、90年代半ばから対象国の3分の2以上で割合が増加している低賃金労働者については、彼らが貧困に陥るのを防ぐために最低賃金と社会・労働市場政策との間に一層の連携が必要だと結論づけている。

参考資料

関連情報