2010年協約総括、全体的に賃上げはわずか
―WSI報告

カテゴリー:労使関係労働条件・就業環境

ドイツの記事一覧

  • 国別労働トピック:2011年1月

ハンス・ベックラー財団経済社会研究所(WSI)は12月13日、2010年の賃金協約の総括を発表した。それによると2010年の賃金協約は、経済危機の影響で交渉は雇用の確保に重点が置かれ、賃金の上昇は全体的にわずかだったとしている。

未だ残る経済危機の痕跡

報告を担当したWSIの賃金協約専門家であるラインハルト・ビスピンク(Dr. Reinhard Bispinck)研究員は、「2010年の交渉結果は、2008年に起きた経済危機の痕跡をはっきりと示している」と断言する。これは協約賃金からも見てとれ、すでに取りきめられた協約賃金上昇率は、多くが1.5%から2.5%の範囲に収まっている。しかし、2010年の急速な景気回復を背景に、一部改善もみられた。特に、秋に行われた鉄鋼の賃金協約交渉では最終的に3.6%という大幅な賃上げに労使が合意したが、ビスピンク氏は「この交渉結果は多くの人に賃金改善への希望を惹起し、新たな刺激となってドイツ経済の内需拡大に貢献した」と評価している。

2010年の賃金協約を振り返ると、重要なメルクマール(指針)となったのは、2月18日に協約を締結した金属産業の交渉結果である。金属産業労使は、2010年5月から2011年3月までの320ユーロの一時金の他に、2011年4月からの2.7%の賃上げで合意した。また、この協約では、経済状況に応じて賃上げを2カ月前倒ししたり、延期したりすることも企業に対して認めている。現時点で、いくつかの大企業が賃上げを2月1日から前倒して実施すると発表している。

2010年の主な交渉結果

2010年の主な交渉結果は、表1の通りだが、以下に簡単に補足する。

多くの分野で、最初の数カ月は賃上げを行わずに一律の1回払い(一時金)で合意している。また、協約の有効期間は12カ月や24カ月など多様な中で、化学産業は11カ月と非常に短い。化学産業のうち2008年の経済危機でそれほど影響を受けなかった一部の企業の従業員については、別途、最高260ユーロの一時金も支払われる。

また、表1には掲載されていないが、連邦労働派遣事業者連盟(BZA)、およびドイツ労働者派遣事業協会(iGZ)の賃金協約は交渉の結果、4段階の賃上げを実施する。これにより、最低賃金は、ドイツ西部で時給7.38ユーロから2012年11月までに8.19ユーロに上がり、東部で6.42ユーロから同一期間で7.50ユーロに上がる。

介護部門の最低賃金については、8月に労働者送り出し法(被用者派遣法、AEntG)によって、西部で時給8.50ユーロ、東部で7.50ユーロの最低賃金が発効した。その他に警備保障業は地域によって時給6.50ユーロから8.46ユーロ、金融関連業(Geld- und Wertdienste)は地域によって時給7.50ユーロから13.50ユーロと、新たな最低賃金協約が締結されたが、法規命令(注1)はまだ出されていない。

出所: WSI-Tarifarchiv(2010年12月)

参考資料

  • WSI zieht Tarifbilanz 2010「Beschäftigungssicherung und mäßige Lohnsteigerungen」

参考レート

  • 1ユーロ(EUR)=109.88円(※みずほ銀行リンク先を新しいウィンドウでひらくホームページ2010年12月24日現在)

関連情報