中間選挙に向けて労働者向け施策が活発化

カテゴリー:雇用・失業問題労使関係

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  • 国別労働トピック:2010年8月

教育関係者の雇用維持を目的とする助成金法案の成立、労働組合選挙における制度改正など、労働者向けの施策が目立っている。

教育関係者の雇用維持を目的とする助成金は約32万人の雇用を維持、もしくは新しく創設するという。

一方、労働組合選挙における制度改正は、投票ルールの変更となっている。アメリカにおける労働組合の結成は、従業員の3分の1以上から組合結成に賛成する署名入りカードを集めたのち、投票によって全従業員の過半数の賛成が必要とされてきた。そのため、投票棄権は自動的に反対票となってきた。これが、7月1日より、投票数の過半数の賛成で組合が結成できることになった。つまり、棄権票は集計から除かれることになったのである。投票方法は暗号入力のうえ電話もしくはインターネットにより行うため、匿名性が保障される。制度変更に向けて、すでに複数の組合から、国家機関、全国調停委員会(NMB)に選挙の申し込みが行われており、特に5万人以上の従業員を抱えるデルタ航空の選挙が注目を浴びている。

組合結成に関する抜本的な制度改革としては、従業員自由選択法案(EMPLOYEE FREE CHOICE ACT)が議会で現在審議中である。従業員自由選択法は、組合結成に賛成する署名入りカードが過半数を超えれば選挙を行わなくとも自動的に結成が認められるとするほか、使用者側による選挙妨害などの不当労働行為の範囲を広げるなど、従来よりも労働組合結成が容易になる考えを打ち出している。しかし、現在のところ共和党や民主党の一部の反対によって成立が難しい状況となっている。したがって、今回の制度変更は法改正の手続きを経ないものの、労働組合側に配慮したものとなっている。

また、民主党支持母体の労働組合に再編の動きも見られる。

05年に労働組合のナショナルセンターAFL・CIOを脱退して、新たに結成されたもうひとつのナショナルセンターCWC(勝利への変革連合)に合流したレイバラーズ(建設労働組合)や、CWCの中核メンバーだったSEIU(サービス従業員労組)が再びAFL・CIOに戻る可能性が高まっている。

以下、8月の主要トピックスを取り上げる。

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