介護期間中の時短と賃金、復帰後に調整
―連邦家族省の新たな両立支援策

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  • 国別労働トピック:2010年7月

連邦家族・高齢者・女性・青少年省は5月20日、新しい仕事と介護の両立支援策「家族介護期間(Familienpflegezeit)」を発表した。家族の介護期間中に、労働者は労働時間を最大50%カットして働くことができ、その間の賃金水準のカットは最大でも従前の25%にとどめ、フルタイム就業復帰後に労働者が従前賃金を下げる方法で対処する。介護休暇中は無給という従来の状態を改め、経営者にもコストを追加負担させない。この新たな支援策によって、仕事と介護を両立させる労働者を増やすのが狙いだ。政府は来年半ばまでに法律を施行する意向でいる。

介護期間中の時短と賃金、後で調整

ドイツには現在、約225万人の介護保険受給者がいる。そのうち150万人以上が自宅で介護されている。連邦家族省が委託したアレンスバッハ世論調査研究所のアンケート調査によると、働く人の65%は「可能な限り自分で家族の介護をしたい」と考えている。しかし、79%が「仕事と介護をうまく両立させることは不可能だ」と回答している。現行制度(注1)は、介護のための休職期間を最大半年間とし、その間は無給としている。そのために、多くの労働者は休職期間中の経済的不利益を懸念している。

新たな支援策では、家族を介護する労働者は最長2年間、労働時間を最大50%まで短縮することを可能とし、その間の賃金を最低でも従前水準の75%と決めている。そのため介護期間中に、労働者は最大25%の賃金の負債を経営者に負うことになる。フルタイム就業に戻ったのち、この差額がゼロになるまで賃金水準は最低でも75%に据え置く。この仕組みだと、通算して最長4年間、賃金水準の低下が続く。

労働者は他の方法を選択できる可能性もある。「労働時間口座」を活用する方法だ。ドイツでは労働時間貯蓄制度(注2)による労働時間口座が普及している。労働時間の柔軟化政策の一環として導入されたもので、積み立てた労働時間を休暇などで清算する仕組みだ。この口座を使って、労働時間の貯蓄残高と介護期の短縮分とを相殺すれば、従前水準の賃金を受け取ることができる。

ただし、この方法には難点がある。多くの企業は1年以内に労働時間残高を清算する「短期口座」を導入しており、複数年にわたる「長期口座」がある企業はまだ少数派だからだ(注3)。

とはいえ、新たな支援策では、労働者は従来のように、介護期間中の無収入に耐える必要はない。使用者は賃金コストを追加負担しないですむ。しかも、ファミリーフレンドリー政策の視点から、優秀な労働者の確保にも有利に働く。

この仕組みは賃金の前払いを企業に強いる。負担はとくに中小企業に重くのしかかる。そのための対策として、政府は従業員250人以下の企業を対象に、前払い賃金について無利子の銀行融資プログラムを計画している。当面は、復興金融公庫(KfW)(注4)が融資する予定だ。

さらに、この仕組みを活用した労働者の年金請求権もフルタイムで就業継続した場合とほぼ同水準であるように設計している。

リスク回避のための保険も

連邦家族省が発表した支援策は、幅広く支持を得ている。例えば公共医療サービス専門家委員会の座長を務めるヴィレ教授(Professor Dr. Eberhard Wille)は「労働者の就業継続を目的とする今回の介護両立支援策は、少子高齢化の現代社会にとって正しい方向であり、家族介護者が就業している間の空白を埋める訪問サービス介護は、今後ますます重要性が増すだろう」と語る。

経済コンサルタントのリュールップ教授(Professor Bert Rürup)は「仕事と介護の両立のためには、柔軟な労働時間の活用が重要な鍵となる」と話す。

同教授はリスク回避の保険を考案した。新たな支援策は、労働者が賃金の一部を前借りし、後日に返済する方法ともいえる。病気などでフルタイム復帰が困難になり、前借賃金の返済が不可能になるケースも想定される。そのリスクを回避するために、同教授が考えたのは、介護期間に入る労働者が月額10ユーロの低額保険料で特別保険に加入する、という方法だ。

シュレーダー家族大臣(Kristina Schröder)は記者会見で「多くの人は、家族のために自宅で介護をしているが、特にフルタイムで働く人はすぐに限界に達してしまう。働く人が家族に対する責任を果たそうとするのを支援するのが今回の目的だ」と説明し、今後、法案づくりを急ぎ、来年半ばまでに法律を施行したいとの意向を示した。

参考資料

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  • 1ユーロ(EUR)=111.48円(※みずほ銀行リンク先を新しいウィンドウでひらくホームページ2010年7月8日現在)

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