域外からの季節労働者、企業内転勤者の受け入れルール共通化へ

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2010年7月

欧州委員会は7月13日、域外からの季節労働者および企業内転勤の専門技術者に関する新たな指令案の概要を示した。域内の労働需要に応じた円滑な労働者の受け入れと管理に関する法整備により、今後の高齢化に伴う就労人口の減少や専門的な人材の不足に対応するとともに、こうした労働者の権利保護に向けて、域内共通の制度作りを目指す。

両指令案は、域外からの移民労働者の受け入れに関するEU共通の法整備を目的に、欧州委員会が2005年に示した「合法的移民に関する政策プラン」に基づくものだ。同プランは、08年に成立した高度専門技術者の受け入れに関する指令とならんで、季節労働者、企業内転勤者、有給研修生の受け入れに関する指令の整備を提案していた。欧州委員会によれば、EUには現在、合法・違法を含めて年間10万人以上の季節労働者が域外から流入していると推定され、その多くは農業・園芸や観光業で就労している。また、企業内転勤による専門技術者の流入は年間1万6000~2万人程度とみられる(注1)。

欧州委員会は、季節労働者の受け入れに関する指令案の概要について、以下のとおり説明している。

  • 共通の定義と基準に基づいて受け入れ手続きを簡素化する(就労許可と滞在許可を統合し、単一の手続きで、30日以内に取得可能にする(注2))。賃金額を明示した労働契約もしくは仕事のオファーを条件とする。雇用主の不当な利益や搾取的な労働条件を防止する。
  • 最長で6カ月の就労を認める査証もしくは滞在許可を発行。期間制限により、季節的ではない(通年の)仕事に従事することやオーバーステイを防止する。
  • 最長期間の範囲内で、契約の延長や雇用主の変更を認める。
  • 季節労働者に対する搾取の防止と安全衛生の保護のため、彼らの労働条件に関して適用される法律を明確化する。
  • 受入予定の雇用主に対しては、季節労働者に適切な住居が提供されることを証明することを求める。また苦情申し立てを容易にする。
  • 複数回の(季節的)入国許可または再入国手続きの簡素化を導入し、合法な季節労働を促進するとともに、域内と母国の循環的な就労を促し、母国への送金や技術移転などを通じて当該国の貧困削減への寄与をはかる。
  • 季節労働者の受け入れ数などについては、労働市場テストの適用の有無をはじめ、国内の状況を勘案した加盟各国の判断に委ねられる。

また、併せて公表された企業内転勤の専門技術者に関する指令案の概要は以下のとおりだ。

  • 制度の適用対象者は、管理職、専門職および研修目的の企業内転勤者(高等教育資格を有する者)。
  • 就労許可と滞在許可を統合し、単一の手続きで、30日以内に取得可能にする。労働市場テストは適用されない。
  • 申請の却下に対する法的な異議申し立てを可能とし、当局側に却下理由の開示を義務付ける。
  • 家族に対する滞在条件をより魅力的なものとするため、1カ国目の入国先での家族の呼び寄せに関する申請を2カ月以内に処理する。
  • 域内の移動を容易にする。企業内転勤の場合、1カ国目の滞在・就労許可を条件として、最長12カ月にわたり他の加盟国のグループ企業における就労を可能とする。当該の2カ国目の加盟国に対しては、この移動の条件に関して情報が提供されなければならない。もし職務が12カ月を超える場合には、2カ国目の加盟国は対象者に対して滞在許可の取得を義務付けることができる。
  • 企業内転勤の対象者は、域内の他国の企業から派遣された労働者と同等の労働条件を享受する。域外の企業が域内の企業よりも優遇されることはない。
  • 加盟国の需要に合わせた柔軟な制度とし、受け入れ数については、加盟各国が決定する。制度の運用にあたっては、一時的な性格を明確にする(管理職・専門職は最長3年、研修目的の企業内転勤者については1年)。
  • 信頼のおける多国籍企業に対しては、より簡易な手続きを設けることができる。多国籍企業は、受け入れに関する義務の履行能力を示し、また当局に企業内転勤に関する情報を提供することでその資格を得て、より迅速な就労・滞在許可の取得の恩恵を受けることができる。

欧州委員会は今後、具体的な指令案を作成のうえ、議会と加盟各国に図る。なお、「合法的移民に関する政策プラン」で言及された残るひとつのカテゴリーである有給研修生については、就学や無給の研修を目的とした域外からの外国人に関する現行の指令の改正により、対応がはかられる見込みだ。

参考資料

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