欧州の技能需要・供給は高度化と予測

カテゴリー:雇用・失業問題人材育成・職業能力開発

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  • 国別労働トピック:2010年6月

EUの研究機関であるCEDEFOP(欧州職業訓練開発センター)は4月8日、欧州における今後10年の技能需要と供給の動向を予測した報告書「Skills supply and demand in Europe」を公表した。

同報告書によれば、将来的な技能供給は、大きくは人口動態と現在の教育訓練政策によって決定される。顕著な増加が想定されるのは、高等教育相当レベルの資格の保有者で、10年後には欧州全体で1600万人増加するとみられる。また、中等レベル資格の保有者(主に職業関連資格)の増加は100万人程度と推計されるが、依然として労働力全体の50%をこうした労動者が占めることになる。一方、低レベル資格者は1500万人減少するとみられる。これは、若年層における高レベル資格者の比率の増加と併せて、比較的低レベル資格者の多い高齢者が労働市場から退出することによる。

加盟国別には、高レベル資格者の増加と低レベル資格者の減少が見込まれる点では各国とも共通しているが、中等レベル資格者の動向については、国によって増加あるいは減少するとの異なる予測がなされている。傾向としては、技能水準が相対的に低い加盟国で中等レベル資格者が増加するとみられるが、これにはマルタやキプロスとならんで、アイルランド、スペイン、ポルトガルや、ルクセンブルク、イギリスなどの旧加盟国も含まれる。

近年の不況の影響により、雇用水準は、不況が生じなかった場合に比べて1000万人分低下したと報告書は推計、今後10年で700万人分の雇用が創出されるが、2008年のピーク時の水準には回復しない、と予測している。その職種別の構成は、産業構造の変化とこれに伴なう雇用動向に影響を受けるところが大きい。今後10年で、一次産業では250万人、製造業などでは200万人の雇用が減少する一方、サービス業(ビジネスサービス、流通・運輸、医療・教育など)の雇用が大きく増加するとみられ、これに応じて、農業における技術労動者や製造業などにおける熟練工、あるいは事務職などで500万人以上が減少する一方、管理・専門・技術職などの高度な職種の従事者で850万人、小売・流通業のサービス職種従事者で200万人、基礎的職種従事者が200万人程度増加すると推計されている。報告書はこの推計結果から、高度な職種と未熟練職種への二極化の進行を懸念している。

全体として、技能需要と供給は並行して高度化すると見込まれるが、需要側の質的な要求を満たし、かつ技能需要の変化に併せて職種間を移動する上でも、職種毎の専門的な技能と併せて、職種横断的な技能の獲得を、教育訓練などを通じて支援する必要がある、と報告書は述べている。

参考資料

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