失業者数、増加傾向に転化

カテゴリー:雇用・失業問題統計

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  • 国別労働トピック:2010年4月

雇用局(Pôle emploi)及び雇用省統計局(DARES)によると、昨年末に減少した失業者数が、今年1月には再び増加傾向に転じた。フィヨン首相は「失業者数は、少なくとも今年半ばまで増加し続ける」と発言、失業手当の受給期間を終えても再就職も他の手当の受給もできないという者が100万人に達すると予想されるなど、フランスの雇用情勢は未だ厳しい状況にある。

失業者数は1月に急増

2010年1月末時点で、雇用局に求職者として登録されていた者は、フランス本土で440.1万人(季節調整済み)に達した。そのうち、「積極的な求職活動を義務づけられている求職者(カテゴリーA、B、C)」は386.5万人で、前月(2009年12月)と比較して1.59万人(0.4%)の増加、前年同月(2009年1月)比では54.4万人(16.4%)の増加であった。2009年12月に減少した失業者数は、再び増加に転じ、2008年半ば以降続いている増加傾向に変化はみられないといえる。

求職活動が免除されている求職者(カテゴリーD、E)については、「職業訓練中などで無職の状態にある求職(カテゴリーD)」は24.6万人(前月比4.7%増、前年同月比31.4%増)、「特殊雇用契約等による就業中の求職者(カテゴリーE)」は29万人で、前月比では1.7%減であったが、前年同月比では28.6%の増加となった。

積極的に求職活動を義務づけられている求職者のうち、「1月に就業活動を一切行なわなかった(カテゴリーA)」求職者は、前月比で1.95万人(0.7%)増、前年同月比で37万人(16.1%)増の266.5万人であった。また、「1月に78時間以下の就業した(カテゴリーB)」求職者は51.1万人で、前月比では1.1%の減少だったが、前年同月比では8.9%の増加であった。さらに、「1月に78時間を超える就業をした(カテゴリーC)」求職者は68.9万人で、前月比で0.3%増、前年同月比では23.6%増であった。

男性、高齢の失業者が増加

この1年間のカテゴリーAの求職者についてみると、女性より男性、若年者より高齢者の増加が著しいという特徴がある。フランスでは従来、カテゴリーA の求職者は女性の方が多かったが、2008年後半以降、その数は逆転している。2010年1月末時点で、女性は125万人、男性は141.4万人に達しており、女性が前月比で0.5%、前年同月比で12.5%の増加だったのに対して、男性では前月比0.9%、前年同月比で19.6%と、大幅な増加となっている。

年齢別にみると、2009年1月末時点では、25歳未満が41.2万人、25歳以上50歳未満が151.5万人、50歳以上が36.8万人で、高年齢者よりも若年者の方がかなり多かった。しかし、2010年1月末時点では、25歳未満で46.6万人、50歳以上では45.5万人と、両者の差がほとんど見られなくなっている(25歳以上50歳未満は174.4万人)。25歳未満が、前年同月比で13.1%の増加であるのに対し、50歳以上では23.6%も増加している(25歳以上50歳未満では、15.2%増)。

求職者登録の期間も長期化している。2010年1月末時点で、求職者登録の期間が1年を超えるカテゴリーA, B, Cの求職者数は130.7万人で、前月比2.8%、前年同月比で29.4%と、大幅に増加している。特に、2009年1月末時点と比べると、求職者登録の期間が「1年以上2年未満の者」が40.2%も増加しており、2008年に失業した者の再就職が厳しい状況にあるといえる。ちなみに、「2年以上3年未満」は27.7%増、「3年以上」は9.1%増加している。

失業保険の受給期間を終えた100万人が無収入に

フィヨン首相は、2月25日、雇用情勢が依然厳しいことを認め、失業者が「少なくとも2010年半ばまで」増加するとの見通しを表明した。また、失業保険手当の受給期間を満了する35~40万人の失業者が、再就職できず、しかも、連帯制度における特別連帯手当(ASS)や積極的連帯所得手当(RSA)を受給できないおそれがあることも、政府の発表から明らかとなった。

長期失業者を対象としたASSや生活保護に相当するRSAなどの連帯制度における手当は、世帯収入額に応じて受給権が決まるため、配偶者などの収入が一定額以上の場合、失業者本人はこれらの手当を受給することは出来ない。失業保険の受給期間を満了する者は例年80万人程だが、金融危機による経済・雇用情勢の悪化から、2010年度には100万人を超え、こうした失業者10人のうち連帯制度の手当を受給できる者は僅か4人にすぎない。

労組や野党は、(1)失業保険手当の受給期間の延長(1~3年)、(2)失業保険手当を6カ月間延長する「経済危機連帯手当」の創設、(3)ASSの予算拡大と受給条件の緩和、(4)RSAの受給条件に25歳未満の若者も含める(注1)――という対応策を政府に求めた。これを受けて政府は、何も手当を受給できない求職者の救済措置として数億ユーロ規模の対策を講じることを表明したが、詳細は明らかにせず、「地方県議会選挙対策にすぎない」とする声も多かった。

3月末に発表された雇用統計では、2月の失業者数も1月に比べ緩やかではあるが引き続き増加している(カテゴリーA、B、C合計で0.2%増)。雇用局や国立統計経済研究所(INSEE)では、「経済は未だ回復しているとはいえず、失業率は今後も上昇し続け、2011年度に落ち着くであろう」と予測しており、フランスの雇用情勢は未だ厳しい状況にあるといえる。

主要参考資料

  • « Demandeurs d'emploi inscrits et offres collectées par Pôle emploi en janvier 2010 », Premières Informations Premières Synthèses, 2010 - no 009, Dares, février 2010
  • « Demandeurs d'emploi inscrits et offres collectées par Pôle emploi en février 2010 »,Premières Informations Premières Synthèses, 2010 - no 015, Dares, mars 2010
  • Les Echos紙 2010年3月24日、25日付

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