失業者数は減少、しかし問題も 

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  • 国別労働トピック:2010年2月

統計局が1月26日に発表した09年第4四半期のGDP成長率は0.1%で、政府の予測した0.4%には及ばなかったものの、08年第1四半期以降初めてプラスに転じた。サービス部門と生産部門がいずれもプラス成長に転じており、流通・宿泊・飲食店業の前四半期からの堅調な成長率(第3四半期が0.7%、第4四半期0.4%)と、ビジネスサービス・金融業の復調(同マイナス0.8%、0%)が寄与した形だ。

前後して20日に発表された9-11月期の失業者数は、前期(6-8月期)から7000人減の245万8000人(失業率は7.8%で前期から横ばい)で、高齢者層(50歳以上)を除く全ての年齢層で減少がみられた。また12月の求職者手当申請者数も、前月から1万5200人減の160万6500人といずれも減少している。

ただし、失業期間が6カ月を超える長期失業者は依然として増加が続いており、失業者全体の49%を占めるに至っている(前年同期は38%)。特に、12カ月を超える失業者は全ての年齢層で増加がみられる。また就業者数も依然として減少が続いており、パートタイム労働者の増加分以上にフルタイム労働者が減少している。

労務管理の専門団体であるCIPD(人材開発協会)は、不況の影響は直接的な失業者数や求職者手当申請者数の増加以上に深刻であるとしている。同団体の調査によれば、08年4月から09年11月の間の整理解雇者数は131万人で、この間の失業者数の純増分の倍に達しており、求職者手当申請者数についても、この間の新規申請者数の累計は純増分の7.5倍に相当する。また、整理解雇後に仕事を得られた労働者の3分の2は、賃金の低下に直面しているという(平均で28%)。さらに失業者本人だけでなく、心理的な影響はその家族や同僚などにも及ぶとして、「失業状況は想定よりも悪化しなかった」との政府の楽観的な姿勢には批判的だ。パートタイム労働者の増加についても、当面の失業増の回避のためには有効だが、フルタイムの仕事を得られないことを理由にパートタイムで働く層の急速な増加に懸念を示している。

統計局のデータからは、教育訓練を受ける層の増加が非労働力人口(economically inactive)を押し上げている状況がうかがえる。CIPDは、就職が難しいとみた若者が失業を回避するために教育訓練に流れていることが原因とみている。ただし、政府が若者向けの教育訓練施策として注力しているアプレンティスシップ(若者を主な対象に、企業での見習い訓練などを実施)における若者の参加状況は、必ずしも芳しいものではない。ビジネス・イノベーション・技能省(BIS)が12月に発表したデータによれば、08年度のアプレンティスシップ新規参加者数は全体で7%近く増加しているが、若年層では、16-18歳層でマイナス7.5%、19-24歳層でもマイナス5.9%と、それぞれ減少している。09年度については、不況の影響で企業による新規受け入れがさらに低迷することや、コース中止の増加による中退者の増加が懸念されている。

一方、若年層の厳しい雇用状況は、大卒者の労働市場にも影響を与えている。企業の大卒者採用を支援する非営利団体Association of Graduate Recruiters(AGR)が、イギリスのほかアメリカやカナダなど5カ国を対象に、09年の大卒者労働市場の状況について行った比較調査結果では、イギリスは求人1件あたりの競争率が他国に比して高く、新卒者向けの賃金水準もほぼ最低レベルとなっている。

調査会社のHigh Fliersが国内の代表的企業100社に対して行った調査によれば、約半数の企業が2010年の大卒者の採用を前年より増やすと回答、全体では約12%増加する見込みだ。ただし、実際には採用予定数の約4分の1にあたる4000人分が、仕事に就いていなかった09年卒業者もしくはインターンとして当該企業で働いていた学生によって既に充足されているという。また、コンサルティング会社のCentre for Enterpriseが中小企業約500社を対象に行った調査では、回答企業の約9割が2010年には大卒者の採用は行わないと回答している。このうち5割近くはそもそも求人自体を行わないとしており、残る4割弱が大卒者は採用しないと回答したものだ。ただし回答の中には、大学入学前の取得が一般的な教育資格(Aレベル、GCSE)と大学卒業資格の区別がつかないケースもみられたという。

参考資料

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