歳出削減により約100万人が職を失う可能性も

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2010年10月

民間コンサルティング会社のプライスウォーターハウスクーパース社は10月13日、政府の歳出削減策が経済や雇用に及ぼす影響に関する分析結果を報告書にまとめた。2014年度までの4年間に、公共部門と民間部門でそれぞれ約50万人、計100万人近くの雇用が失われると推計、民間部門の成長に配慮した削減内容や、税制優遇策などの実施を政府に求めている。

現時点で公表されている計画によれば、政府は2014年度までに840億ポンドの公共部門における予算削減と、290億ポンド相当の増税(2011年1月からの付加価値税率引き上げなど)の実施を予定、各省庁予算の25~40%の削減をはじめ、大きな影響が予想されている。この間、公共部門では約50万人の雇用が失われるとの見通しを政府は示している(注1)。

報告書はこれを受けて、歳出削減の民間部門の雇用への影響を推計、公共部門へのサプライヤーを中心に46万8000人の雇用減が想定され、公共・民間部門の合計では94万3000人分にのぼるとの結果を明らかにした。特に雇用への影響が大きいとみられるのは、ビジネスサービス部門の18万6000人、建設業10万4000人、製造業5万1000人など。地方によっても影響は異なり、北アイルランドやウェールズ、イングランド北東部など、公共部門における雇用の比重が高い地域では、減少率も高くなると予測している。また、併せて実施される増税についても、雇用減につながるとみている。ただしこうした民間部門の雇用減は、近年の不況時と同様、賃金や労働時間の調整により抑制できる可能性があると分析、また、歳出削減は景気回復を遅らせはするが、多少の雇用増は期待できるとしている(例えば公共部門から民間部門への事業の移管が想定される分野など)。報告書は、公共部門におけるパフォーマンスの向上のための再訓練や、再就職の支援、円滑な人員削減などを民間の人材専門企業と協力して進めるとともに、スキルや経験に対応した賃金体系への見直しを提言。また併せて、将来的な成長を勘案した歳出削減を行うべきであるとして、企業の設備投資を促進するための施策や、高成長地域の保護、困難な地域への投資に対する優遇策などを実施するよう政府に求めている。

参考資料

  • Sectoral and regional impact of the fiscal squeeze", PricewaterhouseCoopers

参考レート

  • 1英ポンド(GBP)=129.30円(※みずほ銀行リンク先を新しいウィンドウでひらくホームページ2010年10月19日現在)

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