追加の雇用対策案、発表
―若者を中心に

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  • 国別労働トピック:2010年1月

政府は12月、雇用対策の強化を盛り込んだ白書「英国の回復の基礎を築く:完全雇用の達成」を発表した。増加の続く若年失業者を2010年後半には減少に転じさせることを目指して、若年層向け就業・訓練機会の一層の拡充を図るほか、25歳以上の失業者、一人親、介護者の就業促進策などに、18カ月間で4億ポンドを投じる内容。今後5年間で100万人の雇用増と、就業率80%の達成を目標に掲げている。

白書は、景気低迷以降の雇用状況の悪化を憂慮しつつも、09年末までの失業者の増加は想定よりも40万人程度少なくなる見込みであるとして、積極的労働市場政策やジョブセンタープラスによる就業支援などの政策対応、また労使協調による労働時間短縮や賃金抑制などの雇用維持の努力が奏功したとの見方を示している。ただし、80年代や90年代の不況の回復期には、政府の対策不足が若者などの失業の長期化を招いたと述べ、経済や雇用の回復から取り残されがちな層に向けた支援策の必要性を強調している。

早急に実施の必要な施策として白書が挙げる対策の中心は、4億ポンドの予算額のうち3億ポンドを充てる若年失業者向けの支援策だ。核となるのは、求職者手当の受給期間が6カ月を超える18~24歳層に対する仕事、訓練もしくは就業体験等の機会の提供で、政府が今後18カ月間の目標として既に示している30万人分に、新たに10万人分以上を追加し、受給期間が10カ月目を終えるまでにいずれかへの参加を義務付ける。また16~17歳層については、徒弟訓練(apprenticeship)を通じた企業の受け入れに、全国で5000人を上限として一人当たり2500ポンドを助成するほか、無業者(いわゆるニート)向けの基礎的な教育訓練(Entry to Employment)機会を拡充する。さらに、6カ月を超えて失業状態にある新規大卒者に対しては、インターンシップを含めた支援策の法制化を行う。このほか、失業者全般に向けた施策として、失業初日から起業を支援し、起業準備の期間に3カ月を超えて失業状態にある者に週50ポンドの自営業者手当(self-employment credit)を支給する。また、専門職や50歳以上の失業者に対しては、専門家による集中的な就業支援を行うなど、ジョブセンタープラスを通じた就業支援サービスの質を向上させるとしている。

一方、中期的な課題として、福祉から就労への受給者の移行を後押しする方策に関してもプランが示されている。まず、6カ月を超える全ての受給者に対して、就業を通じた収入が福祉による受給額を週40ポンド上回ることを保障する給付制度(Better off in Work Credit)を、2011年1月を目途に導入する(注1)とともに、受給者の多くが併給を受けている住宅給付について、就業への移行から3カ月間は就業開始前と同額を保障するなどの制度改正を検討する。また、受給者のパートナーに対して2012年4月までに求職活動を義務化するほか、一人親、介護者などの受給者には、就業が不利益にならないような制度上の奨励策をを通じて就業促進を図る。さらに、子供を持つ親の仕事と家庭の両立の改善に向けて、柔軟な働き方や短時間労働を利用しやすくするための方策や、介護者の介護休暇取得の権利の拡大などについても検討を進める。

なお、白書発表の翌日に統計局が公表した雇用関連統計によれば、09年8‐10月期の失業率は前5-7月期から横ばいの7.9%、失業者数は249万1000人と前期から2万1000人の増加に止まったほか、11月期の求職者手当申請者数も、6300人減の162万6200人と21カ月ぶりに減少に転じている。ただし、12カ月超の申請者数については1万5600人と増加が続いており、とりわけ18-24歳層での増加率が高い。

参考資料

参考レート

  • 1英ポンド(GBP)=149.88円(※みずほ銀行リンク先を新しいウィンドウでひらくホームページ2010年1月4日現在)

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