連邦最低賃金70セント引き上げ、7.25ドルへ

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  • 国別労働トピック:2009年8月

連邦最賃が7月24日、時給6.55ドルから70セント引き上げられ、7.25ドルになった。この引き上げの影響があるのはアラバマ州やアラスカ州など31州であり、このほかのアリゾナ州やハワイ州など19の州とワシントンDCでは既に7.25ドル以上の水準に設定されており、影響を受けないとされる。今回の引き上げの結果、連邦最賃と同額の水準に州最賃を設定する州は29州、高い水準に設定する州は13州となった。高く設定する州の水準については表1を参照。なお、州ごと最賃制度は規程の無い州がアラバマ州など5つの州、連邦最賃とは異なる適用範囲に対して低い水準の最低賃金を定める州が4州ある。

表1:連邦最賃7.25ドルを超えた州最賃を設定する州とその水準
高い規程のある州 (時給、ドル)
コロラド州 7.28
オハイオ州  7.30
ロードアイランド州  7.40
ミシガン州  7.40
ニューメキシコ州 7.50
カリフォルニア州 8.00
コネチカット州  8.00
イリノイ州  8.00
マサチューセッツ州  8.00
バーモント州  8.06
ワシントンDC 8.25
オレゴン州  8.40
ワシントン州  8.55

出所:連邦労働省資料より作成

経済政策研究所が7月21日に発表した調査結果によると、280万人の労働者が連邦最賃以下の賃金水準で就労している。この中には18未満の子供を抱える片親が43万人含まれている。また、約160万人が連邦最賃よりもやや上回る賃金水準にあり、連邦最賃引き上げの間接的効果があるだろうと分析。合計で約450万人(全労働者の約4%)の労働者が今回の引き上げの効果として賃金水準が上昇すると推計している。

同研究所は、最賃の引き上げは低所得層の収入を引き上げる効果があり、貧困対策にも有効な政策であるとする。しかも、最賃引き上げによって雇用機会が失われるとして引き上げに反対する見解に対して、過去の最賃引き上げによるそうした影響を示す確たる証拠は見つかっていないとする。また、過去の連邦最賃の水準を分析すると1968年時点の時給1.60ドルはインフレ率等を勘案して推計すると8.4ドルであり、7.25ドルは17%程度低い水準に抑制されているため、更なる引き上げが必要であると主張する。

ソリス労働長官は今回の引き上げについて「今日のような経済が危機的状況に直面する時期に意義深いことである。特に働く女性にとって好材料となる改革である」とコメントした。女性に対して効果的であるとするのは、連邦最賃以下で就労する労働者のうち、3人に2人は女性という統計データがあるからである。労働統計局が発表した『女性の賃金2008』(注1)によると、最賃未満で就労する労働者は約222万6000人。このうち男性が72万8000人であるのに対して女性が149万8000人である。

一方で、最賃引き上げに否定的見解を主張する雇用政策研究所によれば、(1)最賃が10%引き上げられることによって零細企業で就労する若年労働者の4.6%から9%が雇用機会を失うことや、(2)最賃レベルで就労する労働者の8割以上が両親と同居する若年労働者や複数収入を得ている若い夫婦層であり、最賃引き上げ政策がねらいとしている働く低所得層の家族は16%程度しか含まれていないといった、5つのデータを挙げることによって最賃引き上げが政策目的と合致していないと強調する。

参考資料

参考レート

  • 1米ドル(USD)=94.99円(※みずほ銀行リンク先を新しいウィンドウでひらくホームページ2009年8月7日現在)

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